「安全な部屋が少ないと逃げるのがしんどい……」

赤野は廊下側の壁に背中を預けて座っていた。

カシャ……カシャ……カシャ……

甲冑の足音は、部屋に入った事で小さく聞こえる。

扉に耳を押し当て、先程よりも意識を集中させる。

どうやら扉を開ける音には気が付かなかったようだ。

カシャ……カシャッ

止まったという事は、今、甲冑は南西の曲がり角に居るのだろう。

「ねぇ……」

赤野はため息の様な声で私を呼んだ。