「危ないッ!!」
赤野を突き飛ばし、私も反対側に倒れ込む。
私と赤野が尻もちをつくのと、先程まで立っていた床にナイフが突き刺さったのは、ほんの一瞬の出来事だった。
赤野は声も上げずに驚いた様子で、床のナイフと絵画のイエスを交互に何度も見比べる。
床に突き刺さったナイフは平面ではなく立体的で、本物のナイフのように見える。
イエスを見ると、手に入れた目を伏せ、両手をテーブルの上に乗せた元の絵画の状態に戻っていた。
ユダが殺され、血まみれになっている事以外は元の『最後の晩餐』だった。
私は再びイエスが動き出さないか心配しながら立ち上がり、ナイフに近付く。
ユダの血が付着していないナイフの柄を掴むと、少し温かく、しっかりとした感触があった。
力を入れて床からナイフを引き抜けば、質量があり、重みを感じた。



