この屋敷に入り込んでから嗅ぎ慣れた血の臭い。
飛び散る赤は絵の具ではなく、絵画の表面に流れている様で、血は額縁を乗り越え、床に向かって壁を伝い始めた。
視界で何かが動く。
違和感を感じた場所に視線を向けると、イエスが再び血の付いたナイフを振り上げていた。
今度は転がった頭部を切り刻むのだろうか。
こちら側にも血が飛び散ると思い、赤野の腕を引っ張り、イエスを見つめながら後ろに三歩退いた。
するとユダを凝視していた青い目は、私と赤野を交互に見つめた。
一瞬にして背中に冷たい汗をかき、ぞわぞわとした恐怖が背筋を凍らせた。
「……嘘でしょ?」
願う様に呟いたのと、イエスの腕が動き、キラリとナイフが光ったのは同時だった。



