「痛っ!」
親指の腹にチクッとした痛みを感じて、思わずカギを落としてしまった。
「大丈夫!?」
赤野が心配して私の見つめる右手を覗き込む。
赤ワインに濡れていたせいでワイングラスの破片に気付かず、深く突き刺さってしまったようだ。
親指に刺さったままのワイングラスの破片を、爪先で慎重に抜き取ると、溢れ出した一滴の血が赤い絨毯に落ちて同化した。
「これくらい大した事ないわ。舐めておけば治るから」
私は血が出ている親指の腹を口に含み、カギを取ろうと手を伸ばすと、その手を赤野が掴んで止めた。
「また怪我するよ」
「あ、ありがとう」



