ここが街外れだという事は知っているし、近付いてはいけない場所だという事も知っていた。

でも引き返すつもりはなかった。

俺は足を進める。

噂の森に居れば、母が探し出せるはずはない。

鳥の鳴き声が遠くの方で響いている。

緑の葉が揺れて擦れ合う音。

土を踏む、自分の足音。

腐った看板を通過し、一本道を歩き続けた。

開けた空間に出ると、噂の中には登場しなかった赤い屋根の屋敷が現れた。

白いレンガの壁は、遠くからでは何の植物か分からないが、ツルが所々張り付いているのが見える。