~羽瑠姫~
「羽瑠姫...?」
「っ!」
声が出ないっ!どうして?
「羽瑠姫!」
シグもいなくてもう寮に戻ってる。
だから弥生が焦ってるのがよく分かる。
けどボクはそこで意識がなくなった。
~弥生~
「羽瑠姫の声が出なくなったのは今日から?」
さなさんの質問に俺は頷いた。
「何か怖がったとか?」
「分かりません...。羽瑠姫、寝てたんで。」
「そうか。」
頭を撫でてくれた。
「いつもの事だ。心配するな。」
「...はい。」
「今のアイツは誰にも会わないと思う。」
「え...?」
「たとえ、お前でも。」
「そんな...。」
「雅紀さんも会えなかった。」
「...。」
「俺は医者だ。絶対会えるようにしてやる。その時は仲間を連れて来てやれ。」
それに従うしかなかったんだ。


「....よい!弥生!」
「どうかしたか?誠。」
「5回は呼んでるんだけど。」
「ごめん。ボーッとしててな。」
「しすぎだよ。ホント。どうせ羽瑠姫ちゃんの事しか考えてないと思うけど。」
「...お見通しってか?」
「ん?まぁね。」
「で?どうした。」
「また....闇討ちだよ。」
「えっ...。」
「雨龍、天龍、青龍。」
「...そうか。」
「どうする?」
「情報を頼む。」
「了解。」
~羽瑠姫~
嫌な予感だ。
「羽瑠姫?」
「....。」  
さなさんの袖を掴んだ。
『倉庫見てきて。』と、LINEした。
最近人に喋るのに抵抗があるの。
だからLINEで伝える。声、出ないし。
「お前も行こう?」
入院してるわけじゃないから好きな時に外に出れる。...が、怖いから出ない。
手を繋がれて行った。
「さ、さなさんっ!」
「総長っ!」
下っ端全員泣き出した。
「...。」
「心配したんっすよ?!」
「体、大丈夫ですかっ?!」
全員に一斉送信。
『人数が足りないよ。』
「総長には...敵いませんね。」
頷いた。
「雨龍、天龍、青龍が闇討ちされてます」
闇討ち...。
闇討ち?
さなさんの袖を引っ張った。
「大丈夫だ。こいつ、嫌な予感したらしい。だから来た。」
バァンッ
「弥生さんっ、あ、総長!総長、コイツ殴られました!」
さなさんが男の子の近くに行った。
「名前は?」
「玲ですっ!」
「救急車、呼べ!薬いれられてる!」
「っ...!」
怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。怖い。
人の血が...怖い。
「そ、ちょ...?」
「っ...!」
「だ、いじょ、ぶ、です、か?」
’人の事心配するくらいなら自分を心配しなさいっ!’
「こ、え...出ないで、すか?」
「っ...」
「血、つく、っす、よ?」
それでもいい。
抱きしめた。ぎゅって。
「っ....!」
ごめんっ!ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!ごめんなさいっ!
男の子を離したら怖くなった。
「っ...!」
その男の子は意識を失っていた。
「っ...!」
倉庫を出た。
「あ、ちょっ!羽瑠姫!弥生!羽瑠姫を追いかけろ!」
そんな事言ってたけど。
走った。
でもどれだけ走っても弥生には勝てなかった。
腕を掴まれた。
「っ!」
「羽瑠姫、大丈夫。あいつの怪我はお前の所為じゃねぇじゃん。」
首を横に振った。何度も何度も。
「過呼吸になりかけてる。病院行くぞ。」
プチッとそこで意識がなくなった。
「....。」

意識が戻ったのは病院のベットの上。
怖い。何もかも。
部屋の端っこに行って布団に包まりフードを被った。
「羽瑠姫?」
さなさんまでもが、怖くなった。
『ごめん。さなさん、怖い。』
「大丈夫。ゆっくりでいいから」
ガラガラッ
「あ、羽瑠姫、この人、お前の担当を務めたいそうだ。」
「カウンセラーの東出真央です。よろしくね?」
ペンを投げた。女に向かって。
「...あたしは貴方の味方よ?何があっても」
そんなのいらない。味方なんていらない。
「明日からよろしくね?羽瑠姫ちゃん。」
そう言って出て行った。
「殺気、しまえ?」
いつの間にか出ていた。
さなさんはあたしの前に座った。
「薬、大丈夫だった。抜けた。心配すんなよ?」
『ありがとう。』
「俺も医者だからな。」
『白衣を絶対に着ない医者。』
「あぁ。見舞いの人だとよく間違えられる。つっても組員しか働いてねぇけど?」
『女のあいつがここにいる意味が分からないよ。ここは組の皆しかいないのに。
だから信じたのに。』
「面白そうだろ?まぁでもスグに辞めさせる。お前を傷つけたらこの病院を敵に回すようなもんだしな。」
ガラッ
「お嬢、ご飯の時間っす。食えます?」
首を横に振った。
「お嬢、食いに行きましょ!あ、若は待っててくださいよ?」
「分かったから早くいけ。」
「はぁい。お嬢行きましょ。」
ボクは逃げないように車いすに座らされて押してくれてる。
「お嬢、何食べたいですか?」
『先に行きたい場所があるの。』
「倉庫ですか?」
頷いた。
「了解でーす。」
倉庫に連れて来てくれた。
「総長!こんばんわ!」
頭を下げた。
『顔見て安心した。』
「そうですか...。良かったです。」
一斉送信。
『雨龍、天龍、青龍、人数が足りないよ。仲間がヤラれるなんてありえない。
ありえないってゆうか許さない。
これからは幹部も総長副総長も一人行動禁止。
学校内では一人行動OKね。
でもそれ以外は禁止。
二人か三人で行動すること。
絶対ね。
ボクがこんな間は基本的に来れない。
でも、絶対に守れ。
この倉庫。
この仲間を。
頼んだぞ。』
「はいっ!」
その返事だけを聞いて倉庫を出た。

次の日からのカウンセラーは最悪。
「言葉は分かるの?」
布団に包まり端っこにいるだけ。
「反応無し、か...。」
「...。」
これが1週間も続けば我慢ができなくなる。
「ねぇ、羽瑠姫ちゃん」
女を蹴ると数メートル先に飛んだ。
「羽瑠姫ちゃん、こうゆう事はダメなの。分かる?」
近付いてくる女にガラスを向けた。
今、割ったガラスを。
『助けて』ってLINEしてから。
「羽瑠姫ちゃん、ダメよ?それ、下に置きなさい?院長には言わないであげるから。警察沙汰になんてなりたくないでしょ?」
もうっ、いい加減にしてよっ。
本当にもうっ、いいからッ!
お願いだから!声も聞きたくないのっ!
「あなたの気持ちはすっごく分かるわ?でもこんな事していいとは限らないでしょ?」
ガラッ
「ふぅん?羽瑠姫の気持ちが分かるんだ?」
来てくれたのは弥生と誠達とさなさん。
「院長に黙っててあげようと思ったけど無理よ?」
お願いだから、黙って。
「あなたは’人殺し’になりたいの?」
「っ!」
黙ってよ...。
過呼吸になってきた。
「羽瑠姫、深呼吸しろ、それからお前、もう、クビだ。羽瑠姫を苦しめる奴なんて許さねぇから。」
ガラスを握ってるからポタポタと垂れてくる血。
弥生が優しくタオルで包んでくれた。
声が出ないけど、でも弥生は口の動きで分かってくれるんだ。いつも。
弥生はボクを分かってくれる。
「俺の名前、そんなに呼んだって一人しかいねぇよ?」 
片手で背中を擦ってくれた。
口元が緩んだ。  
「カウンセラーなんかお前には必要ねぇよな。弥生がいたら大丈夫。ごめんな?」
『大丈夫。自分を責めないで?』
「ごめん。」
2日後