~羽瑠姫~
次の日目を覚ますと弥生の顔がドアップだった。 
カーテンは閉まってる。
「弥生...。」
「...ん。」
寝起きの弥生にキスをされた。 
「...おはよ。」
「もうっ、心臓持たない...。」
「一緒に住む時には慣れろよ?」
「いつ一緒に住むの?」
「卒業後。」
「夢とかあるの?」
「組を継ぐ。」
「...それだけ?」
「それだけ。」
「そっか。」
「あ、」
「ん?」
「羽瑠姫をいつまでも手放さずに守る。」
「...ありがとっ」
その願い、叶うかな?
卒業まで保ってもその後どうなるかな?
ずっとは弥生の側に居れない。
天龍もボクを忘れる?
青龍もボクを忘れる?
水仙組も西条組も同盟組もボクが死んで悲しむ人はいない?
「弥生、ボクが死んでも誰も悲しまない?」
「死ぬ事なんか考えんな。それにお前には俺がいる。」
カーテンを開けて鈴に抱きついた。
「羽瑠姫...?夢川、なんで羽瑠姫を泣かしてやがる!」
「あ?俺は何も言ってねぇよ!羽瑠姫、おいで?」
「ほら!嫌がってんの分かんねぇかっ!羽瑠姫...。」
頭を撫でてくれた。
「どうした?」
「苦しいッ...。」
「羽瑠姫、また...?」
「ッ...」
「院長室行っておいで。」
コクリと頷いて走った。
~鈴~
「あいつの事、教えてほしい?」
「随分と上からだな。」
「教えてやるよ。あいつの傷跡。」
今でも残り続けるあいつの傷跡を...。
「死ぬ事を考えるようになったのは大輝が死んだその次の日からだった。さなさんが言うにはそれを機会にストレスとか溜まってくると死ぬ事をどうしても考えるようになってしまうらしい。あいつは鈍感だ。自分の感情にさえアイツは気がつけない。だから理由を考えてまた苦しくなる」
そんなアイツをずっと見てきた。
「でも心配かけたくないから、って俺達の前では笑う。」
気付けないからこそあいつは
「自分の気持ちに嘘をつく。偽る。多分いつまでも。」
大輝は支えていた。でもその事は救いだせなかった。
「体に傷が残っていなくてもアイツの心には傷が残ってる。大輝も天龍である俺達だってその傷口は塞げない。だから俺達は夢川、お前に期待してる。」
「まぁ、任せろ。」
「あぁ。今はさなさんに任せとけ。点滴もあるだろうし。」
「あぁ。」
なぁ、羽瑠姫?
こんな大切な男いるんだぜ?
コイツ、お前の中で大輝超えてんだろ?
知ってんだよ。
ずっと一緒にいたんだから。
コイツなら大丈夫だろう?

じゃあ、全部話せよ....。
大輝よりも愛した’アイツ’の事を....。
’西条涙香’の事を...。