「ねぇ、羽瑠姫ぃ?」
「ん?」
「空が綺麗だねぇ。」
「そうだね。」
「今日は綺麗な星が見れそうでよかったぁ。」
「え?」
「だって羽瑠姫は空と星が好きでしょぉ?」
「うん。落ち着くんだ。」
頭を撫でられた。
「あ、聖斗だ。聖斗に撫でられたら落ち着くー。」
「えぇ?僕はぁ?」
「聖夜にギューってされたら落ち着く。」
「ヘヘッ」
心が落ち着いた。でも、涙が出てきた。
「聖斗、何したの?!」
「何もしてない...。」
聖夜に抱きついて声を殺して泣いた。
『羽瑠姫、俺は?』
『うるさーい。』
『酷いっ!』
『あたしは...が好きなんだよー!だから、一番落ち着くのはアイツなんだから。』
『羽瑠姫、話を聞いてください!』
『あんた達と話すことなんてないっ!』
目を閉じれば’あいつら’の顔が思い浮かんで
空や星を見れば’あいつら’の笑顔が浮かんで
あぁ、もう悪夢だ。
あたしが犯した’罪’のせいであいつらは...。
どうしても忘れられなくて
青龍の倉庫に行けば思い出して
もう、どうしようもできないのに。
後戻りできないのに。
なのに、どうして思い出してしまうんだろうか。
苦しいのはあたしじゃないのに。
あたしは苦しめてしまったのに。
なのに、
なのに、
「羽瑠姫、今日は倉庫来るか?」
「最近来ないから皆心配してたよぉ?」
とか、聞いてくるくせに無理やり連れて来られた。
下っ端と遊んでる。トランプでマジックしてる。
「羽瑠姫さん、マジシャンですね!」
「マジックなんかより喧嘩の方が好き!」
「ここでは喧嘩してはいけませんよ?華は守られてください!」
「はぁい。」
「羽瑠姫幹部室まで来てって弥生が言ってるよぉ?」
「了解!じゃあ皆また後でね!」
幹部室に行った。
「何かあった?」
弥生の隣に座らされた。
「他の男と一緒にいるから嫉妬。」
とか言いながら弥生はあたしの膝の上で寝転がった。
「嫉妬って...。付き合ってないでしょ?」
「お前は男に興味がないのか?」
「女に興味があるってゆうの?失礼ね。」
「いや、基本俺らの顔見て媚び売って来るけどお前は違うから。」
青龍は全員イケメンだ。
男までファンになるとか、なんとか...。
聞いた事ある。
「そんな事言ったら弥生達もじゃん。」
「ん?」
「あたしの喧嘩シーンを見て近づいてくる奴なんて、ねぇ?」
「んー、何でだろうな。」
「不思議ね。弥生、髪の毛切ってあげよっか。」
「は?」
「喧嘩する時絡まったりしない?」
「あー、ないけど邪魔になる。」
「切ってあげよっか。」
「お前、切れねぇだろ?」
「ぶー!切れるし。うまいし。プロ並みに。騙されたと思って切らせてね。」
下っ端に新聞と椅子を用意してもらった。
「何で全員見るのさ!」
「羽瑠姫がうまいわけねぇだろ。俺より馬鹿そうなやつだぜ?」
「聡より馬鹿な奴なんていませんから!」
髪に触れた。
「きゃー!綺麗!髪質いいね?染めた事無いでしょう?」
「あぁ。まぁ。」
数分後
「できたー!」
片付けをしている間に弥生には頭を洗ってきてもらった。
幹部室に行った。
「髪の毛乾かしたね。えらい。」
頭を撫でた。
「どう?うまいでしょ。プロ並みでしょう?」
「あぁ。ありがとな。」
「どういたしましてー。」
「何でそんなにうまいんだよ?」
「あたし極度の飽き性なんだ。だから、同じ事を続けられない。そしてハマりやすい。それでテレビで美容師さんが出てて切ってたからあたしも、ってなってやったらプロ並みになった!」
「よく親が許したな?」
「パパはあたしの性格を分かってるから。Okしてくれてるよ。優しいしね。でも皆知ってると思うよ?皆のパパさんと仲良しだから。」
「え...?」
「羽瑠姫のお父さんは、初代青龍副総長だよぉ?」
皆目を見開いた。
西条雅紀。西条組組長で初代青龍副総長。
優しくて強くてあたしの憧れなんだ。
皆は組の若頭でお父さん達が初代青龍幹部。
そして青龍全員西条組の同盟組。
西条組は全国№1。その同盟組は全国№2。
藍色の髪の毛と瞳。
「俺ら、自分の親だけど初代皆憧れなんだ。」
「その中でも1番憧れてるのは初代青龍総長の水仙樹王騎さんなんだ。」
水仙樹王騎。じゅおき、ね?
水仙組組長でもう死んじゃった。
水仙組は世界№1なんだ。
強い。かっこいい。
初代の頃の青龍は本当の命知らず。
馬鹿。それでも憧れてる奴はとても多い。
いなくなった今でも。
あたしと同じ髪の色で同じ目の色なんだ。
皆のお父さんも皆と同じ。
でもパパはあたしと髪の毛の色も目の色も違う。
「俺、そうとは知らずに偉そうな事言いました...。申し訳ございません。」
「弥生、普通にして?じゃないと怒る。」
膝の上で寝転がっていた。
「俺、羽瑠姫の家行きたい。」
「やーだね。」