~弥生~
「弥生ぃ?」
「あ?」
「弥生の目はつめたぁい。」
コイツは彼女じゃない。
ただの遊び相手。
「ねぇ、’羽瑠姫’ってだぁれ?」
「何でテメェがっ...」
「電話鳴ってるよぉ?」
’羽瑠姫’、そう書かれていた。
あぁ、1か月ぶりの電話。
「返せ。」
携帯を取られていた。
「羽瑠姫って女の子の名前でしょぉ?弥生にはあたしがいるじゃんっ!」
『弥生にはボクがいる。支えるのは彼女の役目でしょ。』
「あ、電話切れたぁ。」
「テメェ、殺すぞ。俺はお前のもんじゃねぇ。俺は俺のもんだ。とにかく消えろ」
「っ、」
抱きつかれた。
「羽瑠姫...っ」
「あたしはっ!「バイバイ。」
外に出た。
ブー、ブー、
「あ?」
『誠なんだけど学校に弥生のお父さん来てるよ。』
「あ?何しに。」
『知らないよ。自分で来て。理事長室にいるから。』
俺は理事長室に行った。
理事長室なのに親父以外誰もいない。
空気はピリピリと張り詰めていた。
「羽瑠姫を選ばずに他の女を選んだのか?」
「あぁ?」
「お前、羽瑠姫と別れたのか?」
「そうなんじゃね?」
「口には出してねぇんだろ?」
「...。」
確かに別れよう、とは言われていない。
「羽瑠姫はお前以外の男に触れなかった。なのに男遊びすると思ったのか?」
「あぁ?」
「お前は樹王騎に誓っただろうが!羽瑠姫を守るって!今まで羽瑠姫に支えてもらってたのに羽瑠姫の嘘の言葉を信じるのか!?」
「嘘の、言葉...?」
「羽瑠姫が寮に帰ってこなくなった日からずっとアイツは病院にいた。」
「えっ...?」
「アイツはさなに言ったらしい。青龍と天龍の皆には言うな、と。」
「...。」
「さっき羽瑠姫がお前に電話をかけた。」
「...。」
「本当の事を話そうとした。電話した数秒が経ってアイツは意識を失った。」
俺はアイツの何なんだよ...。
「羽瑠姫はお前にとって愛しの彼女じゃないのか。」
『弥生っ!』
『やーよいっ!』
『デートしてくれたらどうにかなる!』
「俺っ!羽瑠姫の所行ってくるっ!」
「お前が入院してた所だ。今は目を覚してるらしい。」
「親父、ごめんっ!」
「俺に言う言葉じゃねぇ。それに俺はお前の彼女は羽瑠姫以外認めねぇからな!」
「あぁっ!」
病院に言った。
「あの部屋だ。行って来い。」
「はいっ!」
拒否られたらどうしようか...。
ドアを開けようとした時声が聞こえた。
「や、よいっ...、」
だから中に入って抱きしめた。
「ごめんなっ...。俺、お前の気持ちが分かんなくなって、本気で浮気してるんじゃないか、って思って頭真っ白になった。ごめんっ!」
「離してっ!」
「毎日そうやって俺の名前呼んでた...?寂しかった?」
「離してっ!」
「ふぅん?離していいんだ?」
離そうとしたけど腰に腕が回っていた。
「やっぱり、離さないでっ...。ボク、これ以上心配かけたくないって思って皆から離れて忘れてもらおうって思ってたっ!なのに、夜になったら弥生と星見てる所が何度も夢に出てきたっ!」
『死んだ人ってね、お星様になるの!』
「寂しくなって、」
「うん。」
「全部、弥生の所為だからっ...!」
「うん。」
たまには人の所為にしてもいいんじゃねぇか?
「弥生」
「ん?」
「女遊びした...。」
寂しそうな顔をされると、困る...。
「ごめんな...?」
「弥生、ボクが好きで好きで好きで浮気してるんじゃないかって思って嫉妬したの?」
「っ...。あぁ、そうだよ。」
「嫉妬で狂って女遊び?」
「あぁ。」
「じゃあボクも男遊びしよっかなぁ...。」
こいつ、たまにSだな。
Mにはならねぇけど。
「何したら許してくれる?」
「んー?屋上に連れて行ってくれたら。」
羽瑠姫は上からパーカーを羽織ったからおんぶして屋上に行った。

思っていた以上に軽くなってる。
支えられなかった自分が悔しくて涙が出そうになる。
「っ...」
「弥生、転けないでね?」
「転けねぇよ。」
屋上について羽瑠姫を下ろすと寝転がって空を見ていた。
「今日は星が綺麗!」
「毎日星、見てたよな。」
「星は、パパが死んだ時にいた半分くらいの人なんだ。それからパパや大輝。」
隣に寝転がった。
「大輝は、カッコ良かった。優しくて、本当は嫉妬深くて」
「...。」
「でも弥生はそれ以上にかっこ良くて優しくて嫉妬深い。」
俺が嫉妬深い?
「今ですら嫉妬してたくせに。」
「羽瑠姫だってそうだろ?」
「西条羽瑠姫。星が大好き。体が弱くて青龍の華で天龍の総長です。弥生が大好きです。」
「夢川弥生。羽瑠姫が大好き。青龍の総長。頭は悪い。羽瑠姫が初カノ。」
「はっ?」
「ん?」
「ボクがハツカノデスカ?」
「うん。てか、なんでカタコト?」
「でも弥生の初めてはボクじゃない...。」
「羽瑠姫の初めては俺じゃねぇ。」
何かショック。