~羽瑠姫~
夜になってあの部屋に来た。
あの部屋。それは、ボク専用の部屋だ。
ボクが長く入院する時はいつもココ。
ベットも広く部屋も広い。
人形ばっかりで全部黒で統一してる。
「人形多っ!」
「ボク、人形好きだから。全部手作り。」
「羽瑠姫が作ったのか?」
「うん。落ち着くの。」 
「そっか...。俺は何が落ち着くんだろうな。わかんねぇ。」
「ボクがいるよ。ボクが弥生の心を落ち着かせる。何もいらない。ボクだけを見てね。」
「あったりメェだろ。お前も俺だけを見ろ。」
「当たり前!カーペット引いてるからゴロゴロしてね。」
「ありがとな!」
「ご飯にする?お風呂にする?」
「飯、食いたくねぇ...。」
「それでも食べて。お風呂先に入っておいで?」
「入っていいのか?」
「ん?ここにいるだけで寮にいる時みたいに普通にしていいって言ってた。」
「そっか...。じゃあ風呂入ってくる。」
「ん。」
弥生がお風呂入ってる間にご飯を作った。
油っこいのはしんどくなる。
普通のご飯も食べたくないって言ってるくらいだから。
「うーん、おかゆ?」

予想は当たってご飯を1口口に入れただけでトイレに走った。背中さすってる。
「しんどいよね...。その苦しみ取ってあげたいんだけど...。」
「ご、めん」
「何で謝ってんのよ。」
「せっかく、飯作ってくれたのに、ごめん。」
「こうなる事は予想してたわ?ボクだってそうだったし。」
「ありがとう...。」
「彼女だからね?支えるのは当たり前。今のボクにはこんな事しかできないし。」
一週間後
弥生は夜になって初めて弱音を吐いた。
「俺、しんどいっ!苦しいッ!」
抱きしめた。
「辛くて、苦しくて、もうヤダっ!」
「それでいいんだよ。人間いつか弱音を吐く。」
頭を撫でれば誰でも泣き止んでくれた。
「手に入らないものは無理矢理でも手に入れようと今までしてきた。弥生に会うまで。入らないものなんてなかった。パパと同じ顔だから。でもボクを愛してくれるって言ってくれる人もいた。」
皆顔しか見てくれない。
「どれだけ苦しくて、寂しくても、気持ちを全部抑えつけて。弥生に会って初めてボクの全てを見て好き、って言ってくれた。苦しかったら抱きしめてくれた。ねぇ、弥生ごめんね?ボク、あいつらから逃げてばかり。あの日からずっとずっと。弥生、明日頑張ってね?」
ボクも終わらせてくる。これ以上迷惑はかけられない。