~弥生~
「これが羽瑠姫の、’水仙樹扉夏’の過去だ」
俺達は黙ってしまった。
羽瑠姫がそんな重い事を抱えていたなんて
羽瑠姫はずっと笑っていたから
気付けなくてごめんな...。    
ブー、ブー、
「ハイ」
『弥生....?』
「羽瑠姫、どうした?」
いつも通りにしなきゃ。
『ごめん。間違った。』
「誰と間違うんだよ(笑)」
『間違ってなかった。弥生、あたし退院したから。パパにはメールしといた。』
「はやっ!大丈夫なのか?」
『大丈夫。ただ、記憶が戻っただけなんだよ?』
「そうだな。で?今どこにいる?」
『さぁ?どこにいると思う?』
「...。屋上?」
『正解。空を見てるの。』
「動くな。今すぐ行くから。」
『うん。』
電話を切った。
「すいません。俺、行って来ます。」
「羽瑠姫と普通に接してくれるか?」
「はい。俺、羽瑠姫が怖かったんです。過去を聞くまでずっと。でも、今は支えたい、って思ってます。」
俺がアイツを支えるんだ。
「すいません。」
走って学校の屋上に行った。
誠達も来た。
でも、誰も居なかった。
あるのは手紙のみ。
『弥生へ
記憶が戻ったらこうするって決めてたの。退院なんて嘘。
本当は抜け出してきた。
あたしの過去を聞いたんでしょう?
皆だったら軽蔑しないよね。
それでもあたしは皆の側には居れない。
あたしは人殺しなんだ。
大輝もパパもあたしの所為。
天龍にまで迷惑かけてさ。

本当は勉強できるこの頭脳もパパが死んだあの日から何も変わってないの。
勉強ができるだけの頭脳。
体は大きくなるのに心はあの日のまま。

夜が好きだった。
汚れたあたしを隠してくれる夜の闇が。
でも皆がいてまた太陽があたしを照らした。
あたしに生きてる意味はもうないの。
パパには寂しい思いさせちゃうけど
でもこうするしかないの。
本当にごめん。
出逢ってくれてありがとう。 
弥生、青龍を守ってね。
誠、弥生を支えてね。
聖夜、側にいてくれてありがとう。
聖斗、たまには聖夜と離れて遊びに行ったりした方がいいよ。
聡、お前には分かんねぇよって言ったけどあたしは分かってるつもりよ。
あたし達は大人になっていくの。
分かってね。
羽瑠姫より。』

お前は俺らの華じゃねぇかよ。
海に行った。
海岸とゆうか飛び降りたら死んじまう所。
いたんだ。羽瑠姫が。
誠にはホテルまで用意してもらったんだ。
「二人で楽しんできて」 
って。