それって、俺が昨日厚木に洗脳されたやつか? しかしまあ、生徒会長に自らなりたいなんて気の毒な奴がいるとは思わなかった。でもこれで良かったぜ。梅村に譲れば俺は生徒会長なんて面倒事に巻き込まれなくて済むんだからな。
「そうか、梅村がやりたいってなら、しょうがない。譲るよ」
英国紳士のように低い声で決める俺。だが、次の瞬間、桜井の口からは予想外の言葉が返ってきたのであった。
「ちっ、違うんですぅ。夏美さんが生徒会長になるのを阻止して欲しいんですぅ」
「……はい? 何で? 桜井は梅村と仲が悪いのか?」
「いえ、悪くないですぅ、むしろ同じ中学出身だから仲はいいですぅ」
「じゃ、どうして?」
「ごめんなさい。とにかく生徒会長になってください!」
ブンという擬音が聞こえてきそうなほど全力で頭を垂れる桜井。もう、何がどうなっていることやら。
「ちょっ、ちょっと待てよ。桜井は梅村が生徒会長になって欲しくないって言うのか?」
「はい、そうです」
「普通は友達がそういうのになりたいって言うなら協力しないか?」
「はい……そうなのですが……」
桜井は歯切れが悪くなり、しどろもどろしている。何か言い面づらい事情でもあるのか? まあ、女子には女子の複雑な事情があるのかもな。これ以上詮索しちゃかわいそうな気もするし、
「わかったよ。とにかく、厚木にも頼まれちまったから俺がやるよ」
俺の言葉に俯きがちな桜井は顔を上げ笑顔を見せるが、何か釈然としないぞ。
「ありがとうございますぅ……あっ、ありがとうございます!」
そう言って何度も頭を下げる桜井に軽く手を上げ、俺は教室に戻ることにした。しかし、なんたって桜井は梅村がやりたいっていう生徒会長を阻止しようとするのかねえ。しかもその前には異世界の話をするなんて、支離滅裂もいいところだぜ。全然会話の流れがねえじゃねえか。
そんなことをぼんやりと考えながら教室に入ると、
「おい、なんで桜井からお前に話しかけてくるんだ? さてはお前何かやらかしたのか?」
山本は俺が教室に入るなり友人のエロ本を探し出してしまったようなニヤケた表情で詰め寄ってくる。
「別に。昨日の呼び出しは桜井が厚木に推薦したらしい」
「なんだと! なんでよりによって桜井がお前を……いつの間にそんな仲良くなりやがった? で、どこまって行った。Aか? Bか?」
「アホか。今どきそんなの小学生でも言わねえぞ。しかも桜井とはまともに喋ったことはない。お前も知ってるだろ。なんで俺なんかを推薦したのか俺が聞きたいくらいだ」
「そうだよな。でも桜井と話できるなんてお前は幸せものだ。ちょっと性格が暗いかもしれないが、なんつったって、あの可愛らしい顔とナイスバディで俺的校内美女ランクベスト十に入る逸材だぞ。俺なんか会話するチャンスすら到来しないような気がするぜ。俺も喋りてえ……よし、お前生徒会長やれよ。そしたら俺は生徒会室に遊びに行くから、そこで桜井とお近づきになれるな」
あくまでオーバーアクションで俺に詰め寄ってくる山本。暑苦しいって。
「おいおい、俺はどうなるんだ」
「お前のことはどうでもいい。絶対生徒会長になれよ!」
やれやれ、俺に決定権はないものか。でもまあ、よくよく考えてみると生徒会長をやれば厚木の言っていた通り内申点も上がって大学受験に有利になるもんじゃなかったっけ? 勉強じゃダメダメだがこれならちょっとおいしいかも。生徒会なんぞ面倒だが、適当にやってりゃいいんだしな。
「そうか、梅村がやりたいってなら、しょうがない。譲るよ」
英国紳士のように低い声で決める俺。だが、次の瞬間、桜井の口からは予想外の言葉が返ってきたのであった。
「ちっ、違うんですぅ。夏美さんが生徒会長になるのを阻止して欲しいんですぅ」
「……はい? 何で? 桜井は梅村と仲が悪いのか?」
「いえ、悪くないですぅ、むしろ同じ中学出身だから仲はいいですぅ」
「じゃ、どうして?」
「ごめんなさい。とにかく生徒会長になってください!」
ブンという擬音が聞こえてきそうなほど全力で頭を垂れる桜井。もう、何がどうなっていることやら。
「ちょっ、ちょっと待てよ。桜井は梅村が生徒会長になって欲しくないって言うのか?」
「はい、そうです」
「普通は友達がそういうのになりたいって言うなら協力しないか?」
「はい……そうなのですが……」
桜井は歯切れが悪くなり、しどろもどろしている。何か言い面づらい事情でもあるのか? まあ、女子には女子の複雑な事情があるのかもな。これ以上詮索しちゃかわいそうな気もするし、
「わかったよ。とにかく、厚木にも頼まれちまったから俺がやるよ」
俺の言葉に俯きがちな桜井は顔を上げ笑顔を見せるが、何か釈然としないぞ。
「ありがとうございますぅ……あっ、ありがとうございます!」
そう言って何度も頭を下げる桜井に軽く手を上げ、俺は教室に戻ることにした。しかし、なんたって桜井は梅村がやりたいっていう生徒会長を阻止しようとするのかねえ。しかもその前には異世界の話をするなんて、支離滅裂もいいところだぜ。全然会話の流れがねえじゃねえか。
そんなことをぼんやりと考えながら教室に入ると、
「おい、なんで桜井からお前に話しかけてくるんだ? さてはお前何かやらかしたのか?」
山本は俺が教室に入るなり友人のエロ本を探し出してしまったようなニヤケた表情で詰め寄ってくる。
「別に。昨日の呼び出しは桜井が厚木に推薦したらしい」
「なんだと! なんでよりによって桜井がお前を……いつの間にそんな仲良くなりやがった? で、どこまって行った。Aか? Bか?」
「アホか。今どきそんなの小学生でも言わねえぞ。しかも桜井とはまともに喋ったことはない。お前も知ってるだろ。なんで俺なんかを推薦したのか俺が聞きたいくらいだ」
「そうだよな。でも桜井と話できるなんてお前は幸せものだ。ちょっと性格が暗いかもしれないが、なんつったって、あの可愛らしい顔とナイスバディで俺的校内美女ランクベスト十に入る逸材だぞ。俺なんか会話するチャンスすら到来しないような気がするぜ。俺も喋りてえ……よし、お前生徒会長やれよ。そしたら俺は生徒会室に遊びに行くから、そこで桜井とお近づきになれるな」
あくまでオーバーアクションで俺に詰め寄ってくる山本。暑苦しいって。
「おいおい、俺はどうなるんだ」
「お前のことはどうでもいい。絶対生徒会長になれよ!」
やれやれ、俺に決定権はないものか。でもまあ、よくよく考えてみると生徒会長をやれば厚木の言っていた通り内申点も上がって大学受験に有利になるもんじゃなかったっけ? 勉強じゃダメダメだがこれならちょっとおいしいかも。生徒会なんぞ面倒だが、適当にやってりゃいいんだしな。

