心地良い夢みがちな俺の脳に今はやりのR&Bが流れてくる。何の音だ? 徐々に意識を取り戻し、瞼の向こうが明るくなっているのが分かった。R&Bはさらになり続け、今になって気付いたが、枕元で何か振動を発している物がある。携帯が鳴ってるのか? とりあえず携帯をまさぐり、うすらぼんやりした頭で通話ボタンを押してみると、
「もしもし会長?」
夏美らしき奴の声が聞こえた。こいつはいつでもテンション高いなと働かない頭でボケーっと考えてみる。
「あー夏美か? 春巻きはやっぱ醤油だろ」
「もう、何寝ぼけてるのよ? 今何時だと思ってるの!」
「ん? ああ、明るいから夜じゃないな」
段々覚醒してきた頭で壁に掛かっている時計をぼんやり見つめているとだんだんと焦点が合い短針の位置を確認すると十の表示を指していた。
「おい、まだ十時じゃねえか、何をこんな朝っぱらから電話してきてんだよ。休みの日は昼まで寝るって決めてるんだぞ」
「何言っているの? 「まだ」じゃなくて、「もう」でしょ。まったく、老人みたいな事言わないでよね」
「老人だったら暗いうちに起きるだろ。昼間で寝るって言うのは若い証拠だ。それにゴールデンウイークなんてものは日本全国完全休養の日だぞ? 夕べはいろいろあったんだ全国お休みデーくらいはまったりと過ごす権利があるってもんだぞ」
「まだ寝ぼけてるようね。会長、ちょっと携帯を耳に押し当ててくれる?」
夏美の声が急に優しくなった。なんとなく軽いデジャビュの様な感じもするが、半覚醒中の俺は素直に従い、携帯を耳にぎゅっと押し当て夏美の言葉を待つと、携帯の向こうで大きく息を吸い込む音がした瞬間、
「アホーーッッ!」
「うおっ!」
夏美の甲高い声が脳に直撃! 吹き出しが見えるんじゃないかという位の音量が発せられた。思わず携帯を離してしまったが、キーンと言う耳鳴りさえ聞こえるぜ。
しばらく待ち、正常に戻った耳を再び携帯に戻す。
「どう? 起きた?」
夏美の声が聞こえ無事に認識できた。どうやら耳は無事のようだ。
「はい……起きました」
「でさ、なんかおかしくない?」
「何が?」
「昨日帰ってきてからよ、何かとっても大切なものをなくしちゃったような感じがするんだけど……」
夏美の声が急にか細くなった。
「大切なものって何を? 財布でも忘れてきたのか?」
「もう! 真剣に聞いてよね! お財布の訳ないじゃない!」
「はいはい、で、何を忘れたってんだ?」
「何って言われても分からないんだけど……何かとっても大切なものがなくなっちゃったっていう感覚だけあるのよ。ああ、もう! 何かしらこのモヤモヤは! 会長は心当たりない?」
携帯越しでも夏美のイラツキ様がわかるが、こいつは何を言ってるんだ? 大切なものって、俺が知るわけないだろ。と言いかけたところで、夕べの違和感を思い出した。
「そういえば……俺もそんな違和感があったんだったっけ」
「はあ? あったんだったっけ? って、忘れてたの?」
「今思い出したが、夕べは確か俺もそんな感覚があったぞ」
「で、それは何だったの?」
今度は逆に尋問される俺。
「いや……わからない。何かを忘れているって感覚はあるんだけど、それがなんなのかはさっぱり思いだせない」
「そう、会長もあったの、もしかしたら同じものかもね。さやかにも聞いてみるわ。じゃあ、学校でね」
その言葉を残し、携帯はプープーという電子音のみを発するだけとなっていた。
しかし……夏美も何か違和感があるのか、一体どうしちまったんだ? まっ、まさか、タケシが俺たちに人体実験を……って、そんな訳ないか。
「もしもし会長?」
夏美らしき奴の声が聞こえた。こいつはいつでもテンション高いなと働かない頭でボケーっと考えてみる。
「あー夏美か? 春巻きはやっぱ醤油だろ」
「もう、何寝ぼけてるのよ? 今何時だと思ってるの!」
「ん? ああ、明るいから夜じゃないな」
段々覚醒してきた頭で壁に掛かっている時計をぼんやり見つめているとだんだんと焦点が合い短針の位置を確認すると十の表示を指していた。
「おい、まだ十時じゃねえか、何をこんな朝っぱらから電話してきてんだよ。休みの日は昼まで寝るって決めてるんだぞ」
「何言っているの? 「まだ」じゃなくて、「もう」でしょ。まったく、老人みたいな事言わないでよね」
「老人だったら暗いうちに起きるだろ。昼間で寝るって言うのは若い証拠だ。それにゴールデンウイークなんてものは日本全国完全休養の日だぞ? 夕べはいろいろあったんだ全国お休みデーくらいはまったりと過ごす権利があるってもんだぞ」
「まだ寝ぼけてるようね。会長、ちょっと携帯を耳に押し当ててくれる?」
夏美の声が急に優しくなった。なんとなく軽いデジャビュの様な感じもするが、半覚醒中の俺は素直に従い、携帯を耳にぎゅっと押し当て夏美の言葉を待つと、携帯の向こうで大きく息を吸い込む音がした瞬間、
「アホーーッッ!」
「うおっ!」
夏美の甲高い声が脳に直撃! 吹き出しが見えるんじゃないかという位の音量が発せられた。思わず携帯を離してしまったが、キーンと言う耳鳴りさえ聞こえるぜ。
しばらく待ち、正常に戻った耳を再び携帯に戻す。
「どう? 起きた?」
夏美の声が聞こえ無事に認識できた。どうやら耳は無事のようだ。
「はい……起きました」
「でさ、なんかおかしくない?」
「何が?」
「昨日帰ってきてからよ、何かとっても大切なものをなくしちゃったような感じがするんだけど……」
夏美の声が急にか細くなった。
「大切なものって何を? 財布でも忘れてきたのか?」
「もう! 真剣に聞いてよね! お財布の訳ないじゃない!」
「はいはい、で、何を忘れたってんだ?」
「何って言われても分からないんだけど……何かとっても大切なものがなくなっちゃったっていう感覚だけあるのよ。ああ、もう! 何かしらこのモヤモヤは! 会長は心当たりない?」
携帯越しでも夏美のイラツキ様がわかるが、こいつは何を言ってるんだ? 大切なものって、俺が知るわけないだろ。と言いかけたところで、夕べの違和感を思い出した。
「そういえば……俺もそんな違和感があったんだったっけ」
「はあ? あったんだったっけ? って、忘れてたの?」
「今思い出したが、夕べは確か俺もそんな感覚があったぞ」
「で、それは何だったの?」
今度は逆に尋問される俺。
「いや……わからない。何かを忘れているって感覚はあるんだけど、それがなんなのかはさっぱり思いだせない」
「そう、会長もあったの、もしかしたら同じものかもね。さやかにも聞いてみるわ。じゃあ、学校でね」
その言葉を残し、携帯はプープーという電子音のみを発するだけとなっていた。
しかし……夏美も何か違和感があるのか、一体どうしちまったんだ? まっ、まさか、タケシが俺たちに人体実験を……って、そんな訳ないか。

