「さーて、僕もひと暴れしますっか」
シンもタケシと同様飛び込んで行くが、こいつらはそんなに戦闘スキルが高いのか? それに比べて俺たちなんて一般高校生だぞ、戦闘なんか無理に決まっている。そうだろみんな。と同意を求めて残り全員を見渡すと、
「さて、僕らも加勢しますか」
 福居は、先ほどタケシに渡された剣を構え、
「悪いやつをやっつけるにゃあ」
 さやかもすっかりその気になっている。気づけば着ているのは制服じゃなく、いかにもって感じの黒マントととんがり帽子を装備しているじゃねえか、こいつらやるき満々だな。他の連中の気合はわかるが、美由はどうなんだ? いつものビビリ全開か? 俺と一緒だしな、と美由の姿を探すと、
「……」
 他の連中の気合とは別に美由はなぜか無言だった。
 福居、さやかが敵の中に突入し、俺もと意気込んで一歩踏み出すと……、
「夏美さんと会長は下がってて」
 クールな声が俺を制す……が、誰だ? ここには夏美と美由しかいないはずだが。まさか……美由か?
「みっ、美由?」
 夏美は目をパチクリさせ、あまりの驚きに瞳孔が開ききっているようだ。
 同じく俺も混乱しそうだぜ。いつもは「ひゃあ」とか「ふああ」とか舌ったらずボイスの美由が低音で喋っている。しかも、目つきが何万倍も鋭いじゃないか、変な薬でも飲んじまったのか? ってくらい別人っぽいぞ。
「タケシが言ってた通り、夏美さんと会長は世界を救う鍵となる人、傷一つつけさせない」
 お前は本当に美由か? 別人が憑依したんじゃないのか? と思えるほどりりしい顔をしていた。
 って思っているうちに敵登場。福居たちの攻撃をかいくぐり一人が突進し、目の前まで来た男が斧らしきものを構えているのが視界に入った。
 俺は瞬間的にそいつと夏美の間に入る。世界崩壊の危機だってのに、こんなとこで殺られるわけにはいかないぜ。
 俺は足元に落ちていた太い棒で応戦を試みるも、あっけなく斧で振り払われてしまった。
ちくしょう、マズイぞ。
 敵はさらに斧を振りかざす。斧に日の光が反射し、光の筋が視界に入った。 
「ヤバイ……やっぱ、一般人じゃ無理だったのか? せめて職がほしかったぜ」
思わず目を瞑ってしまい、空気を斧が切り裂く音がわかる。殺られる!
……んっ、なかなか斧が降りてこないと恐る恐る目を開けると、目の前で美由が素手で相手の斧を掴んでいるじゃねえか。「素手ですか!」と突っ込みを入れたくなるのをぐっとこらえ、
「みっ、美由?」
 俺の上ずった問いかけに、美由は顔色一つ変えず冷静そうに、
「二人は伏せてて」
 美由の細い腕では時間の問題か、などと考えているうちに、間合いをつめ、前蹴りを見舞った。
「うげっ」
 男はそのまま後ろ向きにひっくり返り、美由は間髪入れずに手を天にかざすような仕草を行い、「……シュレップ」と呟くと、目の前の男は、一瞬白い光に包まれ光が消えた後、催眠術にかかったかのようにカクっと前のめりに倒れ動かなくなってしまった。
「殺しちまったのか?」
「眠らせただけ」
 横から見た美由の目が今までに見たこともない様につり上がっている。えー美由さん。もしかしてキレてしまったのかな?
「どうしたの、美由。まるで別人みたい……本当に美由なの?」
 キョトンとた顔の夏美は首を傾げていた。
「私は、私ですよ。いつもの美由です。夏美さんと会長がこの世界を救ってくれるはずだから私は全力で守ります。私から離れないで」
 そう言って美由は俺たちの手をとり、
「それに、会長は無職だしね」
 人差し指を口にあててウインクするが、そんなにカワイくウインクされてもなあ、すまなかったねえ、頼りない会長で。
「覚醒したってわけね? すごいわ! 美由。ありがとう」
 夏美は全てを悟った様子で頼もしい美由を見つめるが、お前は理解が早くていいなあ。
 美由との会話にすっかり夢中になってしまったが、他の連中は無事か? 美由に守られながら、俺は他のメンバーを探すべく目を向けた。
さやかの姿を探す。さやかはチビだから探すのが大変だ……って、あちこちに火が上がっているじゃねえか。間違いなくあそこだな。
「ファイアー」
 さやかが唱えると同時にその手には炎が乗ってるじゃないか。さやかは、それを手当たり次第ブン投げている。こりゃ熱そうだ。
 そうかと思えば、「サンダー」と言って両手を天にかざす。瞬間的に周囲は雷雲に囲まれ、稲光が走りまくっており何人かは打たれてるぞ。
さやかは、すでに会得した攻撃系魔法で、敵を好き放題攻撃している。アル意味無敵だな。
 一方で福居はと言うと……。