…
……
………
「かいちょう、かいちょう、しっかりしてにゃ~、死んじゃあ、いやだにゃあ~」
んっ……さやかの声が聞こえる。俺は刺されて死んだはずだ。
そうか、ここは天国なんだな。天国は自分の理想郷になるって聞いたことがあるぞ。俺は微かな意識の中で、ぼんやりと訳の分からんことを考えていた。
「会長、南校生徒会はどうするんですか。死んじゃだめですぅ」
こんどは美由か、俺の理想郷はいつものメンツばっかだな。次は夏美あたりが出てくるのかな。
……うおぃ、夏美はなしか、という突っ込みを入れようとしたところで意識が戻る。
目を開けると、さやかが目を真っ赤にして腕にしがみつき、美由は挙動不審に部屋の中を行ったり来たりしていた。
「あっ、会長、よかったにゃあ~」
ゆっくりと体を起こすと、さやかが叫びながら勢い良く飛びついてくる。痛てえって。
「よかったですぅ。安心しました」
美由は、指で涙を拭いながら微笑みかけた。
俺は……、たしか廊下で刺されて。
「廊下で、血だまりの中に倒れていたんだよ。夏美さんが見つけて、ここに運んだんだ。美由さんの回復呪文でなんとか持ち直したんだけど、許容範囲を超えた重傷だったらしく心配したよ」
福居は、部屋の壁に寄りかかりながら腕を組んでいた。
「そうか、美由ありがとな」俺は痛む腹を押さえながら起き上がるが、片腹がズキズキするぜ。
「そっ、そんな、いいです。私の方こそ、もっと強力な呪文が使えたら、すぐに治せたんですけど……」
美由はそう言って俯いてしまった。
気にするな。死ななければ御の字だ。棺に入れられて馬車の後を引きずられるのは御免だしな。
「ところで、夏美は?」
俺の問に福居は言葉を発せず、視線だけをベットの反対側に移した。
ん……。ふとベッドの脇に視線を逸らすと、自分の腕を枕にして寝ている夏美が目に入った。
「夏美さんは会長が刺されてからずっと、心配して付き添っていたんだよ。会長が戻ってこないって伝えたら何か胸騒ぎがするって言って、みんなで探しに出ようとしてたところだったんだ。あんな心配そうな夏美さんの顔は始めて見たよ。でもまあ無事に生き返ってよかった。僕としても会長が居なくなると張り合いがなくなるしね」
そう言うと福居は、いつものニヤケ顔を出した。
そうか、アリガトな夏美。俺は椅子に座りながらベッドに寄りかかり眠っている夏美の頭をそっと撫でると、
「うーん」
夏美が目を覚ましたらしく、右手で右目をこすりながら俺を見上げ、
「あっ」
声を発すると同時に俺に向かい飛び込んできた。
「よっかた。死んじゃったかと思ったじゃない。会長のバカー」
耳元で夏美が叫んでいるが、これはこれで幸せだぞ。夏美に抱きつかれるなんて、そうそうないしな。これは刺した奴にお礼を言ってもいいぐらいかな。
なんて……そんな訳ないよな。
「しかし俺はどのくらい寝てたんだ? 約束の時はいつだ?」
「丸三日だよ。三日前の夜に刺されて、今が三日後の夜。明後日が約束の時だよ」
福居は、真剣な顔で続けた。
「明後日には、すべて決着がつくはず、世界崩壊が回避できれば、平和な時間も戻ってくるし、そうでなければ全てが終わる。僕はまた元の生活に戻りたい。皆もそうだと思う。そうならないように皆で力を合わせてがんばろう」
全員が頷く、って、おいおい俺を差し置いて仕切らないように。
まあいいか、メンバーの結束は高まったし俺も生き返った。ここは会長の器の大きさを見せてあげようじゃないか。
「なにぶつぶつ言ってんの?」
夏美が腹をこずく、「痛てえ」傷はまだ塞がってはいないようだ。
……
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「かいちょう、かいちょう、しっかりしてにゃ~、死んじゃあ、いやだにゃあ~」
んっ……さやかの声が聞こえる。俺は刺されて死んだはずだ。
そうか、ここは天国なんだな。天国は自分の理想郷になるって聞いたことがあるぞ。俺は微かな意識の中で、ぼんやりと訳の分からんことを考えていた。
「会長、南校生徒会はどうするんですか。死んじゃだめですぅ」
こんどは美由か、俺の理想郷はいつものメンツばっかだな。次は夏美あたりが出てくるのかな。
……うおぃ、夏美はなしか、という突っ込みを入れようとしたところで意識が戻る。
目を開けると、さやかが目を真っ赤にして腕にしがみつき、美由は挙動不審に部屋の中を行ったり来たりしていた。
「あっ、会長、よかったにゃあ~」
ゆっくりと体を起こすと、さやかが叫びながら勢い良く飛びついてくる。痛てえって。
「よかったですぅ。安心しました」
美由は、指で涙を拭いながら微笑みかけた。
俺は……、たしか廊下で刺されて。
「廊下で、血だまりの中に倒れていたんだよ。夏美さんが見つけて、ここに運んだんだ。美由さんの回復呪文でなんとか持ち直したんだけど、許容範囲を超えた重傷だったらしく心配したよ」
福居は、部屋の壁に寄りかかりながら腕を組んでいた。
「そうか、美由ありがとな」俺は痛む腹を押さえながら起き上がるが、片腹がズキズキするぜ。
「そっ、そんな、いいです。私の方こそ、もっと強力な呪文が使えたら、すぐに治せたんですけど……」
美由はそう言って俯いてしまった。
気にするな。死ななければ御の字だ。棺に入れられて馬車の後を引きずられるのは御免だしな。
「ところで、夏美は?」
俺の問に福居は言葉を発せず、視線だけをベットの反対側に移した。
ん……。ふとベッドの脇に視線を逸らすと、自分の腕を枕にして寝ている夏美が目に入った。
「夏美さんは会長が刺されてからずっと、心配して付き添っていたんだよ。会長が戻ってこないって伝えたら何か胸騒ぎがするって言って、みんなで探しに出ようとしてたところだったんだ。あんな心配そうな夏美さんの顔は始めて見たよ。でもまあ無事に生き返ってよかった。僕としても会長が居なくなると張り合いがなくなるしね」
そう言うと福居は、いつものニヤケ顔を出した。
そうか、アリガトな夏美。俺は椅子に座りながらベッドに寄りかかり眠っている夏美の頭をそっと撫でると、
「うーん」
夏美が目を覚ましたらしく、右手で右目をこすりながら俺を見上げ、
「あっ」
声を発すると同時に俺に向かい飛び込んできた。
「よっかた。死んじゃったかと思ったじゃない。会長のバカー」
耳元で夏美が叫んでいるが、これはこれで幸せだぞ。夏美に抱きつかれるなんて、そうそうないしな。これは刺した奴にお礼を言ってもいいぐらいかな。
なんて……そんな訳ないよな。
「しかし俺はどのくらい寝てたんだ? 約束の時はいつだ?」
「丸三日だよ。三日前の夜に刺されて、今が三日後の夜。明後日が約束の時だよ」
福居は、真剣な顔で続けた。
「明後日には、すべて決着がつくはず、世界崩壊が回避できれば、平和な時間も戻ってくるし、そうでなければ全てが終わる。僕はまた元の生活に戻りたい。皆もそうだと思う。そうならないように皆で力を合わせてがんばろう」
全員が頷く、って、おいおい俺を差し置いて仕切らないように。
まあいいか、メンバーの結束は高まったし俺も生き返った。ここは会長の器の大きさを見せてあげようじゃないか。
「なにぶつぶつ言ってんの?」
夏美が腹をこずく、「痛てえ」傷はまだ塞がってはいないようだ。

