「美由……大丈夫よ。誰も責めてはいないわ。それが本当なら辛かったのね。違う世界に一人で来て、誰にも言えない悩みを抱えていたのね……言ってくれたら良かったのに。美由、私たちは親友でしょ。私は美由を信じるよ」
夏美はやさしく美由を抱きしめると、
「なっ……夏美さん。すみません……すみません……」
消え入りそうな声で夏美の腕の中で小さく呟く美由。しばらくは美由の嗚咽だけが部屋に響き、美由を抱きしめ頭を撫でる夏美。時間の経過とともに美由も落ち着いてきたらしく夏美から離れると、
「本当にみなさんすみませんでした。でもこれは必然なことで、みなさんの力を貸してください」
改めて真剣な表所で全員を見渡した。
「美由もこう言ってるじゃないの! 会長! ゆるしてあげなさいよ!」
いつものように左手を腰に宛がい、右手をビシっとおれに突きつける夏美だが、俺は最初から怒ってねえって。でも、まあ、美由の真剣な表情を見ていると本当のようだ。俺達にどんな力があるか知らないが、見た目一般人なんだ。危ない事なんか起こらず、たいしたイベントも発生しないだろう。
全員が落ち着きを取り戻した頃合で、タケシとキョウとやらが姿を現した。
「みなさん、落ち着かれたようですね」
全員を見渡した後、タケシは美由を見て微笑みかけた。
「美由、任務ご苦労様です。誰一人欠けることなく連れてきてくれました。これで、この世界は安心です。奥に下がって休んでください」
そう言うと、美由は真剣な表情で、タケシを見つめ返し、
「いえ、私にも話を聞かせてください。なぜ、この方々が必要だったのか。自分の耳で確認したいんです。お願いします。でないと、皆さんを騙したままになってしまいます」
「しかし……」
「何? 美由が聞いちゃいけないって言うの? 美由も立派な南校生徒会の一員よ、聞く権利があるってもんでしょ」
夏美がタケシに喰ってかかる。なんとなくだが、タケシは気を使って美由を休ませようとしているようにも思えるが、ここは夏美に任せておくか。
「分かりました、では、美由も聞いてください」
タケシは改めて全員を見渡し、
「この世界は、あなた方がいた世界と空間座標を共有しています。周りの風景もどことなく、見た覚えがあるのではないでしょうか? 違うのはそこに住んでいるのが、我々ということです」
たしかに、周りの田んぼの様子は、南校から見た景色そのままだった。俺たちの高校がすっとんきょうな施設に変わっている以外は、周囲の環境に大きな変化はないようだ。
「ちょっとまて、時間はどうなるんだ。俺たちは夜中の生徒会室にいたはずだぞ、それがなぜ今はこんなに明るい? タイムトラベルでもしちまったのか?」
もう破れかぶれな俺に向かい、タケシは「フッ」と息を漏らし、
「時間の違いはありませんよ。あなた方の世界と全く同一で現在は午前二時前ですね。明るいのは人工太陽のおかげなのです。自然の太陽は……あることはあると思うのですが、その光はある時を境にこの地球には振り注がなくなってしまったのです」
タケシは俺たちに腕時計を見せ時刻を確認させながら淡々と答えているが太陽の光が届かないだと? なぜだ? いつから?
俺の疑問を他所に、タケシは続ける。
「今から数年前の世紀末の年ですが、それまではこちらの世界もあなた方の世界と同様平和でした。しかし世紀末の七月あの予言が我々の世界では的中してしまったのです」
「あの予言?」
俺が疑問を呈すると同時に夏美は、
「もしかして、隕石が落ちるっていう予言ってやつ?」
「一九九九年の七月に恐怖の大王がやってくるっていうやつだにゃ」
こういう雑学でさやかに勝るやつはいない。こういう情報をどこで仕入れるのか疑問だが。
「そうです。こちらの世界では、その予言が的中してしまいました」
タケシは、再び全員の顔を見渡し、
「一九九九年の七月のことでした。巨大隕石が地球上に落下したのです。隕石の情報はかなり前から発見されており、各国政府はミサイルやらレーザーなどで攻撃を加えたのですが、効果はなく、発見から三十日後にその隕石はこの地球に衝突しました。場所はエジプトの南、サハラ砂漠の真ん中です」
タケシは一呼吸おいてから、静かに続けた。
夏美はやさしく美由を抱きしめると、
「なっ……夏美さん。すみません……すみません……」
消え入りそうな声で夏美の腕の中で小さく呟く美由。しばらくは美由の嗚咽だけが部屋に響き、美由を抱きしめ頭を撫でる夏美。時間の経過とともに美由も落ち着いてきたらしく夏美から離れると、
「本当にみなさんすみませんでした。でもこれは必然なことで、みなさんの力を貸してください」
改めて真剣な表所で全員を見渡した。
「美由もこう言ってるじゃないの! 会長! ゆるしてあげなさいよ!」
いつものように左手を腰に宛がい、右手をビシっとおれに突きつける夏美だが、俺は最初から怒ってねえって。でも、まあ、美由の真剣な表情を見ていると本当のようだ。俺達にどんな力があるか知らないが、見た目一般人なんだ。危ない事なんか起こらず、たいしたイベントも発生しないだろう。
全員が落ち着きを取り戻した頃合で、タケシとキョウとやらが姿を現した。
「みなさん、落ち着かれたようですね」
全員を見渡した後、タケシは美由を見て微笑みかけた。
「美由、任務ご苦労様です。誰一人欠けることなく連れてきてくれました。これで、この世界は安心です。奥に下がって休んでください」
そう言うと、美由は真剣な表情で、タケシを見つめ返し、
「いえ、私にも話を聞かせてください。なぜ、この方々が必要だったのか。自分の耳で確認したいんです。お願いします。でないと、皆さんを騙したままになってしまいます」
「しかし……」
「何? 美由が聞いちゃいけないって言うの? 美由も立派な南校生徒会の一員よ、聞く権利があるってもんでしょ」
夏美がタケシに喰ってかかる。なんとなくだが、タケシは気を使って美由を休ませようとしているようにも思えるが、ここは夏美に任せておくか。
「分かりました、では、美由も聞いてください」
タケシは改めて全員を見渡し、
「この世界は、あなた方がいた世界と空間座標を共有しています。周りの風景もどことなく、見た覚えがあるのではないでしょうか? 違うのはそこに住んでいるのが、我々ということです」
たしかに、周りの田んぼの様子は、南校から見た景色そのままだった。俺たちの高校がすっとんきょうな施設に変わっている以外は、周囲の環境に大きな変化はないようだ。
「ちょっとまて、時間はどうなるんだ。俺たちは夜中の生徒会室にいたはずだぞ、それがなぜ今はこんなに明るい? タイムトラベルでもしちまったのか?」
もう破れかぶれな俺に向かい、タケシは「フッ」と息を漏らし、
「時間の違いはありませんよ。あなた方の世界と全く同一で現在は午前二時前ですね。明るいのは人工太陽のおかげなのです。自然の太陽は……あることはあると思うのですが、その光はある時を境にこの地球には振り注がなくなってしまったのです」
タケシは俺たちに腕時計を見せ時刻を確認させながら淡々と答えているが太陽の光が届かないだと? なぜだ? いつから?
俺の疑問を他所に、タケシは続ける。
「今から数年前の世紀末の年ですが、それまではこちらの世界もあなた方の世界と同様平和でした。しかし世紀末の七月あの予言が我々の世界では的中してしまったのです」
「あの予言?」
俺が疑問を呈すると同時に夏美は、
「もしかして、隕石が落ちるっていう予言ってやつ?」
「一九九九年の七月に恐怖の大王がやってくるっていうやつだにゃ」
こういう雑学でさやかに勝るやつはいない。こういう情報をどこで仕入れるのか疑問だが。
「そうです。こちらの世界では、その予言が的中してしまいました」
タケシは、再び全員の顔を見渡し、
「一九九九年の七月のことでした。巨大隕石が地球上に落下したのです。隕石の情報はかなり前から発見されており、各国政府はミサイルやらレーザーなどで攻撃を加えたのですが、効果はなく、発見から三十日後にその隕石はこの地球に衝突しました。場所はエジプトの南、サハラ砂漠の真ん中です」
タケシは一呼吸おいてから、静かに続けた。

