十二時ちょうど――


「じゃあ、立ち上げるにゃあ」
 さやかがパソコンの電源を手探りで押すと、部屋中にハードディスクがフル回転しているシーク音が鳴り響き、見慣れたOSのロゴマークが浮かび上がった。ここで、パソコンが立ち上がらないとかいう怪奇現象を期待していた俺は、少し拍子抜けしながらも、全員と同様にTFTモニターをじっと見つめた。
 さやかが、素早い手つきで、インターネットを立ち上げ、即座にURLを入力しだした。入力が終わり全員を見渡して頷きENTERキーを押すと、ブラウザの画面が更新され、そこには以前見た幾何学模様と潰れかけた魔方陣のようなものが現れた。
「これって、この前見たやつと同じよねえ」
夏美がホっとした表情で俺を見たのもつかの間、さやかが叫ぶ。
「あっ、見てにゃ、魔方陣が動いてるにゃあ」
全員がモニターに釘付けになった。たしかに魔方陣らしきものが動いている。それは元の形がわからないほどゆがみ、縦長になったり、横長になったり、おまけに背景の幾何学模様も下から上へとスクロールしているじゃねえか。何か出来の悪いフラッシュを見ているようだぜ。そのうち潰れた魔方陣は眩い光を発しはじめ、短い間隔で点滅しはじめた。
「サブリミナル効果か!」と思った時には既に遅く、俺は自分の意識が薄れていくのに気がついた。
やばいな、まさかこんな目にあうとは、ウソだろ。意識が闇に溶け込む間際、「みなさん、ごめんなさい」という誰かの声が聞こえ、声の主を確認しようとしたところで、完全に俺の意識が消失してしまった。