「なっちゃんの夢の解決編だにゃ、楽しみだにゃあ、どんなイベントが待ってるにゃあ? きっとたくさんフラグが立つにゃあ」
さやかは嬉しそうに目を輝かせているが、こいつは毎度夜の学校に忍び込むのが楽しみなのではないだろうか、どうも思考が読めないのである。まあアニオタでパソコンマニアの思考などわからなくても良いが。
「よっ、夜の学校ですかこの前みたくおばけとかは出ないんですよねえ」
先月の心霊探索ツアーを思い出したのか、美由は顔面蒼白になっており、ライオンの群れに遭遇しちまったインパラように震えていた。
「そんなに怖いんだったら、来なくてもいいぞ」
俺は諭すように言うと、
「私だけ仲間はずれはイヤですぅ。行きますぅ。でも、怖いなあ」
どっちなんだと突っ込む俺に、福居は、
「まあ、五人揃っての南校生徒会だからね、何だったら僕が守ってあげます」
「ほんとですか、じゃあ、お願いしますぅ」
美由の中では、福居は五ポイントアップだろう。小技を利かせる奴だ。到底俺には真似できないね。
そんな会話をしつつ解散となり、各自夜に備えて早めに帰ることとなった。
俺は家に帰ると早夕食を母親に要請し、速攻で食い終わると夜に備えて仮眠をとることにした。携帯のアラームで目が覚めると十時をまわっているじゃないか、しまったギリギリだ。寝癖を直すヒマもなく玄関に向かい、姉の「こんな時間にどこ行くの?」という問いに「ちょっと出かけてくる」とそっけなく答え急いでチャリを飛ばし電車に飛び乗る。駅から学校まではほぼダッシュで世界陸上の四百メートルで金メダルがとれるんじゃないかという位のペースで正門までたどりついた。
汗だくになり息を整えながら制服の上着を肩にかけ、歩きながら正門に近づくと人影が四つ確認できる。俺以外の全員が到着しているようだ。
「もう! 遅っーい! 何やってる訳? 会長が遅刻じゃしょうがないでしょ!」
いつものように両手を腰に宛がい鋭利な刃物並の睨みを利かせる夏美が立っていた。
はいはい、すみませんねえ、こんな会長で。
「やる気あんの? バツとして校庭十周!」
ビシっと右手を振り上げるが、スポ根アニメか! 断固拒否するぞ。
「じゃあ全員にコーヒーくらいおごりだな」
福居は嫌味のようにニヤリとして、正門をよじ登り裏側から留具をはずした。なんかいつも俺が奢ってるような気がするのだが気のせいか? それに集合時間まではあと三分あるじゃねーか。というおれの訴えも聞き入れられず、どうやら多数決で決まったようだ。やれやれ民主主義バンザイだぜ。
何とか誰にも見つからず、生徒会室までたどり着いた俺たちは電気をつけると通報されるかもしれないという福居の意見を採用し、真っ暗な生徒会室に立っているが、いやはや、夜の学校ってのはこの前の心霊発見ツアーで経験したがさらに深夜となると、恐ろしく雰囲気が違うな。
それじゃなくても、ここへ来る途中の美由は水道の水がしたたる音で悲鳴をあげたり、建物の軋む音でしゃがみこんだりと、存分にお化け屋敷体験だし、第二回心霊発見ツアーでもしにきた様な気分だぜ。
全員が息を潜めて立ちつくす。その緊張感に耐えられなくなった俺は時計のライトをつけて、時間を確認すると十一時五十分を指していた。暗闇でさらに沈黙の時が流れしばらくの後、さやかが口を開いた。
「にゃあ、なっちゃんの夢の解決編だにゃあ、どんなフラグが立つかにゃ? それともおばけさんが出てくるかにゃあ?」
「ひぃ」
どうやら美由が腰を抜かしたらしい悲鳴が聞こえたが、
「これも乗りかかった船だ。これで夏美の不安要素が消えるなら、ネットを見るくらい訳ないぜ」
と、俺は強気になってみたものの、どこか不安である。まるで、俺の中にある『何かやベーだろセンサー、――まあ、いわゆる第六感ってやつだ――』がやかましく警告音を発しているような気がしたが、気のせいだろう。
どうせ大したことは起きないさ。結果として何もなかったってことになるに決まってる。まあ心霊発見ツアーでは、心霊写真を撮ってしまうとか、本が不自然に落ちるとか奇妙な経験をしちまったが、不思議な体験か。来るなら来てみやがれってんだ。
さやかは嬉しそうに目を輝かせているが、こいつは毎度夜の学校に忍び込むのが楽しみなのではないだろうか、どうも思考が読めないのである。まあアニオタでパソコンマニアの思考などわからなくても良いが。
「よっ、夜の学校ですかこの前みたくおばけとかは出ないんですよねえ」
先月の心霊探索ツアーを思い出したのか、美由は顔面蒼白になっており、ライオンの群れに遭遇しちまったインパラように震えていた。
「そんなに怖いんだったら、来なくてもいいぞ」
俺は諭すように言うと、
「私だけ仲間はずれはイヤですぅ。行きますぅ。でも、怖いなあ」
どっちなんだと突っ込む俺に、福居は、
「まあ、五人揃っての南校生徒会だからね、何だったら僕が守ってあげます」
「ほんとですか、じゃあ、お願いしますぅ」
美由の中では、福居は五ポイントアップだろう。小技を利かせる奴だ。到底俺には真似できないね。
そんな会話をしつつ解散となり、各自夜に備えて早めに帰ることとなった。
俺は家に帰ると早夕食を母親に要請し、速攻で食い終わると夜に備えて仮眠をとることにした。携帯のアラームで目が覚めると十時をまわっているじゃないか、しまったギリギリだ。寝癖を直すヒマもなく玄関に向かい、姉の「こんな時間にどこ行くの?」という問いに「ちょっと出かけてくる」とそっけなく答え急いでチャリを飛ばし電車に飛び乗る。駅から学校まではほぼダッシュで世界陸上の四百メートルで金メダルがとれるんじゃないかという位のペースで正門までたどりついた。
汗だくになり息を整えながら制服の上着を肩にかけ、歩きながら正門に近づくと人影が四つ確認できる。俺以外の全員が到着しているようだ。
「もう! 遅っーい! 何やってる訳? 会長が遅刻じゃしょうがないでしょ!」
いつものように両手を腰に宛がい鋭利な刃物並の睨みを利かせる夏美が立っていた。
はいはい、すみませんねえ、こんな会長で。
「やる気あんの? バツとして校庭十周!」
ビシっと右手を振り上げるが、スポ根アニメか! 断固拒否するぞ。
「じゃあ全員にコーヒーくらいおごりだな」
福居は嫌味のようにニヤリとして、正門をよじ登り裏側から留具をはずした。なんかいつも俺が奢ってるような気がするのだが気のせいか? それに集合時間まではあと三分あるじゃねーか。というおれの訴えも聞き入れられず、どうやら多数決で決まったようだ。やれやれ民主主義バンザイだぜ。
何とか誰にも見つからず、生徒会室までたどり着いた俺たちは電気をつけると通報されるかもしれないという福居の意見を採用し、真っ暗な生徒会室に立っているが、いやはや、夜の学校ってのはこの前の心霊発見ツアーで経験したがさらに深夜となると、恐ろしく雰囲気が違うな。
それじゃなくても、ここへ来る途中の美由は水道の水がしたたる音で悲鳴をあげたり、建物の軋む音でしゃがみこんだりと、存分にお化け屋敷体験だし、第二回心霊発見ツアーでもしにきた様な気分だぜ。
全員が息を潜めて立ちつくす。その緊張感に耐えられなくなった俺は時計のライトをつけて、時間を確認すると十一時五十分を指していた。暗闇でさらに沈黙の時が流れしばらくの後、さやかが口を開いた。
「にゃあ、なっちゃんの夢の解決編だにゃあ、どんなフラグが立つかにゃ? それともおばけさんが出てくるかにゃあ?」
「ひぃ」
どうやら美由が腰を抜かしたらしい悲鳴が聞こえたが、
「これも乗りかかった船だ。これで夏美の不安要素が消えるなら、ネットを見るくらい訳ないぜ」
と、俺は強気になってみたものの、どこか不安である。まるで、俺の中にある『何かやベーだろセンサー、――まあ、いわゆる第六感ってやつだ――』がやかましく警告音を発しているような気がしたが、気のせいだろう。
どうせ大したことは起きないさ。結果として何もなかったってことになるに決まってる。まあ心霊発見ツアーでは、心霊写真を撮ってしまうとか、本が不自然に落ちるとか奇妙な経験をしちまったが、不思議な体験か。来るなら来てみやがれってんだ。

