なつよん ~ある生徒会の平凡な日々~

「もしかして、これが夢の使者とやらが言っていたサイトなのか?」
 夏美は画面を見つめたまま首を傾げ、
「だと思うんだけど、なんか意味がわからないのよね。でも、てっきり何もでてこないものだと思ったから、ちょっと驚きよ」
しかしまあ、その使者とやらによると、これを満月の夜に見なければならないらしい。夜つったって学校に侵入しなければならない訳で、その時間になるとこの画面が変わるとでも言うのか?
「それは私にもわからないけど、でも夢の中ではっきりと言ってたのよ。夜十二時に見れば、こちらの世界に来れますって」
 夏美は珍しく不安げな表情で視線を落とした。こんなに弱っている夏美ってのは新鮮だな。こりゃ、夢をずっと見つづけてくれれば弱ったままで少しはおとなしくなるのか? でもまあショボくれた夏美を見ているのは俺としても心苦しいし、いつもの勢いが無い分楽なのだが、さすがにそれじゃあ俺としても少し拍子抜けってもんだ。おっと、決して俺はM気質ではないぞ、などと所懐に耽っていると、不意にさやかが、
「じゃあ、試してみるといいにゃあ、きっと夜の十二時に見れば解決しちゃうにゃあ」
「はっ? 何言ってるんだ?」
「本当にゃあ、こういうのは思い立ったが吉日にゃあ、試してみればきっと怖い夢も見なくなるにゃあ」
「おいおい、夜中の十二時だなんてわざわざ忍びこまなくちゃならないんだぞ」
「そんなの大丈夫にゃあ、楽勝だにゃあ、ねえなっちゃん」
 さやかのフリに夏美は、
「えっ、ええ、その時間に見れば何らかの解決方法が見つかると思うんだけど……でも、いいの? さやか」
「面白そうにゃあ、やってみないと何にも解決しないにゃあ、それに真夜中の学校ってシチュは何かが起こりそうな気がするにゃあ」
「そうね、やっぱ行動あるのみね。こちらから動かないと事は好転しないわよね」
さやかと夏美は見つめあい頷いているが、やれやれ、こいつらは本当にやる気なのか? 夜中の学校なんてかなり不気味だぞ、俺は反対したいがやっぱ速攻却下なんだろうな。
そこへ掃除当番だったらしく、美由と福居が揃ってやってきて、
「ど、どうしたんですか、夏美さん、さやかさん、なんか嬉しそうですよぉ」
 美由は、二人のニヤケ顔を不思議そうに見つめており、
「夏美さんの夢の回答でも見つかりましたか?」
 福居はいつものスマイル顔で二人を見つめていた。
 俺は、全員を着席させると夏美の夢の続きを話し始めた。この二人はおおよそは知っているから、それ以後の話。特に満月の夜十二時にこのサイトを見る必要があることを話していると、
「それで、今度の満月に実行する事にしたにゃあ」
 いきなりさやかが口を挟んできやがった。視線を移すと漫画のように目が星マークになっている。こいつはただ単に「夜中の学校」って言葉が好きなんじゃないだろうか。ゲームじゃないんだぞ。
「ひゃあ、また夜の学校に来るんですかぁ、怖いですぅ」
 美由は福居の腕にしがみつき、福居はうんうんと頷いてから、
「ついにきたか、それは夢の使者からのメッセージだね、とすれば、それを見ればメッセージが表示されるなり、夢を見なくなるなりの解決策が見つかるはずだよ。もっとも、何もないという結論もありえるけどね」
 恐らく結果的にはと言うか絶対後者の方になるだろう。しかしカッタルイぜ。せめて、満月が休日前でありますように、平日じゃあ次の日に起きられる保証はないぞ。でもまあ、何もなかったとしても、今後の対応はそれから考えても遅くはないしな。なんなら今後は俺が一緒に寝てやろうか?
「アホなこと言ってんじゃないわよ!」
 と同時に夏美のパンチが飛んできた。グーだぞ。グー。若干だが顔にめり込む感覚がしましたが。