へんてこな夢を夏美が見始めてから二週間ほどが経過した日の朝。
いつもどおり早朝田園散歩を終え校舎に入ると、めずらしく下駄箱の前で夏美が待っていた。
「どういう風のふきまわしだ? 俺に愛の告白でもあるのかな?」
「冗談もほどほどにしなさい!」
いつものボディーを炸裂させようとするが、いかんせん今日は動きが鈍くあっさり避ける事ができた。こりゃ、本当に参ってるのか?
「何よ、避けるんじゃないわよ」
夏美は相変わらずの眉間にしわを寄せている状態で、プイっとすねた子どもの様な顔をしてそっぽを向いたが、すぐに真剣な顔をし、
「ねえ、私が見たあの夢って覚えてる?」
「ああ、知らない奴がでてきて、世界の終わりだの、助けが必要だのと言った、終末論者の話か?」
「そう、それなんだけど、夕べも見ちゃって……」
夏美は俯き加減で少し溜息まじりに、
「何か、夕べの夢は少し違ったの。いつもの二人がでてきたって所までは同じなんだけど、その人達が言うには次の満月の夜十二時に、生徒会室でインターネットを開けって言うの、そうすれば私たちの世界に来れるからって」
なんじゃそりゃ、夢の使者はずいぶんハイテクな事を言うじゃないか。さらにこちらの世界に来いだなんて。満月の夜十二時なんて普通でも気味が悪い時間帯だし、あるとすれば武道の達人小僧が大猿に変身するアニメ的物語だけだぞ、実際俺は満月を見ても何とも思わん。違う自分が生まれそうになる気配もない。それはアニメや漫画の中だけで、現実的には信じ難いけどな。それに私たちの世界ってのはどこだ? 今俺たちの居る世界とは別の世界があるって言うのか? 俺の疑いの眼差しを見たのか、
「夢だから放っておけばいいんだけろうけど、なんだか気になっちゃって、それにURLも指定したの。妙にリアルな夢だったし、なんだか気味が悪くてね……」
夏美は言い終わると幽霊が柳の下を歩くように、ユラユラと教室に向かい力なく歩き出した。
そんな話を聞かされてもにわかには信じられないぜ。なんだって、その別世界の終末論者とやらは夏美の夢に出てくるんだ? 夏美はとても世界を救う感じじゃないし、どちらかと言うとそのしゃべりと性格で世界を征服する方なのじゃないのか。それに我々の世界に来いだなんて、厚かましいにも程があるぜ、なんて考えているうちに授業が終わっていく。
しまった、今日も授業の内容を覚えていないや、俺の成績が悪化したら間違いなく夏美のおかげだな。生徒会長が留年なんて勘弁してほしいものだが。
放課後、生徒会室に赴くと、夏美とさやかがパソコンの前で画面を食い入るように見つめていて、俺が入ってきたのも気づかない様子だ。声をかけると二人は至近距離から散弾銃をぶっ放された鳩のように飛び上がり驚きの表情を浮かべ、
「もう、入ってきたなら一言くらいかけなさいよ」
夏美がいつものアヒル口で怒っている。
「まあまあいいじゃないか、ところで二人で画面を見つめちゃって、何やってんだ? 新しいゲームでも開発したのか?」
「なっちゃんが気になってたサイトを見てたんにゃけど、全然意味がわからないにゃあ」
不思議そうな顔をして再びさやかはモニターを覗き込み、つられて俺も覗き込んで見ると、そこには何やら幾何学模様が描かれていた。その真ん中には潰れかかった魔方陣のような多面体があり、文字らしい文字はない。
いつもどおり早朝田園散歩を終え校舎に入ると、めずらしく下駄箱の前で夏美が待っていた。
「どういう風のふきまわしだ? 俺に愛の告白でもあるのかな?」
「冗談もほどほどにしなさい!」
いつものボディーを炸裂させようとするが、いかんせん今日は動きが鈍くあっさり避ける事ができた。こりゃ、本当に参ってるのか?
「何よ、避けるんじゃないわよ」
夏美は相変わらずの眉間にしわを寄せている状態で、プイっとすねた子どもの様な顔をしてそっぽを向いたが、すぐに真剣な顔をし、
「ねえ、私が見たあの夢って覚えてる?」
「ああ、知らない奴がでてきて、世界の終わりだの、助けが必要だのと言った、終末論者の話か?」
「そう、それなんだけど、夕べも見ちゃって……」
夏美は俯き加減で少し溜息まじりに、
「何か、夕べの夢は少し違ったの。いつもの二人がでてきたって所までは同じなんだけど、その人達が言うには次の満月の夜十二時に、生徒会室でインターネットを開けって言うの、そうすれば私たちの世界に来れるからって」
なんじゃそりゃ、夢の使者はずいぶんハイテクな事を言うじゃないか。さらにこちらの世界に来いだなんて。満月の夜十二時なんて普通でも気味が悪い時間帯だし、あるとすれば武道の達人小僧が大猿に変身するアニメ的物語だけだぞ、実際俺は満月を見ても何とも思わん。違う自分が生まれそうになる気配もない。それはアニメや漫画の中だけで、現実的には信じ難いけどな。それに私たちの世界ってのはどこだ? 今俺たちの居る世界とは別の世界があるって言うのか? 俺の疑いの眼差しを見たのか、
「夢だから放っておけばいいんだけろうけど、なんだか気になっちゃって、それにURLも指定したの。妙にリアルな夢だったし、なんだか気味が悪くてね……」
夏美は言い終わると幽霊が柳の下を歩くように、ユラユラと教室に向かい力なく歩き出した。
そんな話を聞かされてもにわかには信じられないぜ。なんだって、その別世界の終末論者とやらは夏美の夢に出てくるんだ? 夏美はとても世界を救う感じじゃないし、どちらかと言うとそのしゃべりと性格で世界を征服する方なのじゃないのか。それに我々の世界に来いだなんて、厚かましいにも程があるぜ、なんて考えているうちに授業が終わっていく。
しまった、今日も授業の内容を覚えていないや、俺の成績が悪化したら間違いなく夏美のおかげだな。生徒会長が留年なんて勘弁してほしいものだが。
放課後、生徒会室に赴くと、夏美とさやかがパソコンの前で画面を食い入るように見つめていて、俺が入ってきたのも気づかない様子だ。声をかけると二人は至近距離から散弾銃をぶっ放された鳩のように飛び上がり驚きの表情を浮かべ、
「もう、入ってきたなら一言くらいかけなさいよ」
夏美がいつものアヒル口で怒っている。
「まあまあいいじゃないか、ところで二人で画面を見つめちゃって、何やってんだ? 新しいゲームでも開発したのか?」
「なっちゃんが気になってたサイトを見てたんにゃけど、全然意味がわからないにゃあ」
不思議そうな顔をして再びさやかはモニターを覗き込み、つられて俺も覗き込んで見ると、そこには何やら幾何学模様が描かれていた。その真ん中には潰れかかった魔方陣のような多面体があり、文字らしい文字はない。

