「そう言えば、この前買った夢占いの本にそういうのは載ってなかったのか?」
「うーん。私も気になって探してみたんだけど、載ってなかったのよね。似た様なやつはあったんだけど、それによると『まだ見ぬ己の隠された真実の力』なんて書いてあったのよ。やっぱり所詮は占いね。てんで意味がわからないし、もっとこう、的確な表現にしときなさいって感じだわ」
夢占いなんてのは大体そんなもんだ。
「まったく何かしらね。何かのお告げ? 言いたい事があるなら目の前に現れなさいっ! って感じだわ」
夢に文句を言ってもしょうがないだろ、でも、まあいつもは天上天下唯我独尊がモットーの夏美がめずらしく弱気になっているじゃないか。これはこれで以外にもカワイイとか思いつつ、俺は具体的な解決策を見出せないまま悪戯に時間だけが過ぎていき、とりあえずその日は解散となった。心配したらしくさやかが、
「怖い夢は楽しい事をやってるときっと見ないにゃあ、私のゲーム貸すにゃあ、かわいい娘がいっぱい出てくるにゃあ」
「い、いいわよ、さやか、あんまりそういうゲームやらないしね。今度にするわ」
「にゃあ、じゃあ、私が一緒に寝てあげるにゃあ。そうすれば怖い夢も見ないにゃあ」
「いいって、さやか、大丈夫よ」
「にゃあああ」
少し寂しそうなさやかだが、お前はただ騒ぎたいだけじゃないのか?
で、翌日。あいかわらず、大きな熊を二匹飼っている夏美に、気にするな的なことを言い励ますも、あまり効果がないのはわかりきっていることで、その日の授業中は俺までヘコんでいた。
放課後、今日はちゃんと出席した福居にこれまでの経緯を話す。最初は疑っているような表情で聞いていた福居だが、次第に真剣な顔になり、
「それは、本当に誰かが夏美さんの力を必要としているんじゃないかな。その人の強い想いが強い思念となって夏美さんの夢の中に出てきてるんだと思うよ」
何を言っているんだ福居。そんなことが起こる訳ないだろう。夢ってのは所詮夢なんだよ。
「いやいや、僕はそうとは思わない。なにかの警告ってことはあると思うんだ。予知夢って言うのがあるようにね」
「そうかあ?」
予知夢を見たことのない俺には信じられないが、ここは福居の話を聞いてやろう。
いつになく、真剣モードで話す福居に、夏美は、
「私は、特別な力なんかはないわよ。あったら面白いんだけどねえ、今までだって言われたことはないし、そんな事はなかったわ。いったって普通の女子高生だもん」
いつものように強がって言う夏美の言葉も心なしか迫力が感じられないな。
「助けを求めているのが、この世の人とはかぎらないよ。例えば、その声の主はこの世の人じゃないとか。この時代の人じゃないとかいう可能性もあるよ」
福居が怪談話のようなマネで見つめると、美由は「ひっ」と驚いたような叫び声で、夏美にしがみついた。
おいおい、怖いことを言うな。じゃあ夏美は幽界の使者やら未来人からスカウトされているっていうのか?
「いやいや、僕は可能性を言ったまでであって、幽霊とかの話をしたんじゃないんだけどさ。いずれにせよその人の想いが強ければ、さらなるアクションがあるかもしれない。夏美さん、気をつけてください」
不吉なことをさらりと言いやがる。
なんとかならんのか、でも夢じゃどうしようもないよなあ、幽界の使者やら未来人は置いておいても、実際に夏美は寝れない状態にある。これをなんとかしないと、夏美の熊は冬眠を終えてそのうち暴れだしそうだ。
手を頭の後ろに回して椅子の背もたれに身を委ねてみるが、さっぱり解決方法が思い浮かばん。今日は帰るとするか。
夏美の悪夢はその後、さらに三日ほど続いたそうで、その間俺たちは放課後の生徒会室でその対応策を話し合ったが結局結論が出ずじまい。そりゃそうだろ、人の夢の内容にはとやかく言えず、人が夢を見る仕組みを解明して、夢を見ないようにするなんてことは、俺たちには到底できないことだもんな。アルテミドロスは夏美の夢をどう分析するのだろうか? 少し興味はあるが。
「うーん。私も気になって探してみたんだけど、載ってなかったのよね。似た様なやつはあったんだけど、それによると『まだ見ぬ己の隠された真実の力』なんて書いてあったのよ。やっぱり所詮は占いね。てんで意味がわからないし、もっとこう、的確な表現にしときなさいって感じだわ」
夢占いなんてのは大体そんなもんだ。
「まったく何かしらね。何かのお告げ? 言いたい事があるなら目の前に現れなさいっ! って感じだわ」
夢に文句を言ってもしょうがないだろ、でも、まあいつもは天上天下唯我独尊がモットーの夏美がめずらしく弱気になっているじゃないか。これはこれで以外にもカワイイとか思いつつ、俺は具体的な解決策を見出せないまま悪戯に時間だけが過ぎていき、とりあえずその日は解散となった。心配したらしくさやかが、
「怖い夢は楽しい事をやってるときっと見ないにゃあ、私のゲーム貸すにゃあ、かわいい娘がいっぱい出てくるにゃあ」
「い、いいわよ、さやか、あんまりそういうゲームやらないしね。今度にするわ」
「にゃあ、じゃあ、私が一緒に寝てあげるにゃあ。そうすれば怖い夢も見ないにゃあ」
「いいって、さやか、大丈夫よ」
「にゃあああ」
少し寂しそうなさやかだが、お前はただ騒ぎたいだけじゃないのか?
で、翌日。あいかわらず、大きな熊を二匹飼っている夏美に、気にするな的なことを言い励ますも、あまり効果がないのはわかりきっていることで、その日の授業中は俺までヘコんでいた。
放課後、今日はちゃんと出席した福居にこれまでの経緯を話す。最初は疑っているような表情で聞いていた福居だが、次第に真剣な顔になり、
「それは、本当に誰かが夏美さんの力を必要としているんじゃないかな。その人の強い想いが強い思念となって夏美さんの夢の中に出てきてるんだと思うよ」
何を言っているんだ福居。そんなことが起こる訳ないだろう。夢ってのは所詮夢なんだよ。
「いやいや、僕はそうとは思わない。なにかの警告ってことはあると思うんだ。予知夢って言うのがあるようにね」
「そうかあ?」
予知夢を見たことのない俺には信じられないが、ここは福居の話を聞いてやろう。
いつになく、真剣モードで話す福居に、夏美は、
「私は、特別な力なんかはないわよ。あったら面白いんだけどねえ、今までだって言われたことはないし、そんな事はなかったわ。いったって普通の女子高生だもん」
いつものように強がって言う夏美の言葉も心なしか迫力が感じられないな。
「助けを求めているのが、この世の人とはかぎらないよ。例えば、その声の主はこの世の人じゃないとか。この時代の人じゃないとかいう可能性もあるよ」
福居が怪談話のようなマネで見つめると、美由は「ひっ」と驚いたような叫び声で、夏美にしがみついた。
おいおい、怖いことを言うな。じゃあ夏美は幽界の使者やら未来人からスカウトされているっていうのか?
「いやいや、僕は可能性を言ったまでであって、幽霊とかの話をしたんじゃないんだけどさ。いずれにせよその人の想いが強ければ、さらなるアクションがあるかもしれない。夏美さん、気をつけてください」
不吉なことをさらりと言いやがる。
なんとかならんのか、でも夢じゃどうしようもないよなあ、幽界の使者やら未来人は置いておいても、実際に夏美は寝れない状態にある。これをなんとかしないと、夏美の熊は冬眠を終えてそのうち暴れだしそうだ。
手を頭の後ろに回して椅子の背もたれに身を委ねてみるが、さっぱり解決方法が思い浮かばん。今日は帰るとするか。
夏美の悪夢はその後、さらに三日ほど続いたそうで、その間俺たちは放課後の生徒会室でその対応策を話し合ったが結局結論が出ずじまい。そりゃそうだろ、人の夢の内容にはとやかく言えず、人が夢を見る仕組みを解明して、夢を見ないようにするなんてことは、俺たちには到底できないことだもんな。アルテミドロスは夏美の夢をどう分析するのだろうか? 少し興味はあるが。

