四月も中旬を過ぎ、新一年生がやっと高校生活になれてきたかなと思われる日の夕方だった。
例のごとく、俺たちは生徒会室に参集している。まあ、この季節は何の役目もないのだが、習慣的ってもんは怖いもので、放課後はまったりと生徒会室でコーヒーを飲むのがすっかり俺たちの日課となっていた。たわいもない話、ネットサーフィン、全てがいつも通りになっているはずだったのだが、ただ一人だけいつもと違っている奴がいた。夏美である。いつもは美由とマシンガントークを炸裂させているのに、今日ばかりは借りてきた猫的になんだかおとなしいのであった。生徒会室にいても俯き、時折溜息を漏らしていた。これはこれで何か不気味だったが、ここまで弱っている夏美を見るのも珍しい。って言うか初めてみたぞ。一体どうしちまったんだ?
そんな事をぼんやり考えているうちに下校時刻となり、いつものように、俺たち五人は一緒に駅へ向かっている。さやかと美由、福居は並んで歩いており、その後ろから俺と夏美が歩くいつものパターンだ。いつもは俺を敬うことなく罵声を浴びせられるのだが、今日はずっと沈黙だった。二人黙って前を歩く三人衆についていくが、俺ってこういう雰囲気って苦手なんだよな。なにか会話を探さないと。
「なあ」
「何よ」
夏美は俺をチラ見し、食べ物じゃない事を悟った鯉のように直ぐに視線を戻してしまった。会話終了ですか? いつものテンションと明らかに違うな。
「なあ、今日は随分おとなしいじゃないか。どうかしたのか?」
「どうでもいいでしょ、そんな事。会長には関係ないでしょ! 私だって考え事くらいするわよ。それとも何? そんなにおかしい訳?」
一瞬いつもの逆切れテンションに戻ったが、またすぐに前を向き溜息を漏らす。
「おかしいって訳じゃないけどな、なんかいつもと様子が違ったからさ。どうした? って思ってよ」
「まあ、会長に言ってもしょうがないんだけど、そこまで懇願してるなら相談してあげても良くてよ。ありがたく思いなさい」
どこぞやのセレブのように嘲弄の顔で俺を見つめるが、別に懇願なんかしてねえって、それにありがたくもないぞ。
「なーに、なんか言った?」
横を歩きながらガンを飛ばし、脇腹を肘で小突かれる。
「まあ、本当にたいしたことじゃないんだけど、三日位前から変な夢を見ちゃうのよね」
「変な夢?」
「そう、今でもはっきりと覚えてるんだけど、知らない男の人がでてきて……」
夏美によると、この三日間、夢の中にまったく知らない男が出現し、あたなはこの世界にいるべきではない。あなたは私たちの希望。こちらの世界に来て助けてください。みたいなことを毎回言っていたと言うのだ。俺は、
「まあ、夢ってのは得てして訳のわからんものだ、ずっと前に読んだ小説かなんかの内容をふと思いだしたんだろうよ。気にするこたあない。明日には忘れてるだろ」
楽観視を決め込んで全然心配していない俺を見て、ちょっとムクレづらになった夏美は、
「もういいわよ。あんたに話をした私がバカだったわ」
と、アヒルみたいな口をしてプイっとそっぽを向いてしまった。
やれやれ、夢の話でムクレられるとはね……まあ、明日になれば本当に忘れてるだろうよ。
そんな会話をしているうちに駅に到着し、それぞれが家路についた。
例のごとく、俺たちは生徒会室に参集している。まあ、この季節は何の役目もないのだが、習慣的ってもんは怖いもので、放課後はまったりと生徒会室でコーヒーを飲むのがすっかり俺たちの日課となっていた。たわいもない話、ネットサーフィン、全てがいつも通りになっているはずだったのだが、ただ一人だけいつもと違っている奴がいた。夏美である。いつもは美由とマシンガントークを炸裂させているのに、今日ばかりは借りてきた猫的になんだかおとなしいのであった。生徒会室にいても俯き、時折溜息を漏らしていた。これはこれで何か不気味だったが、ここまで弱っている夏美を見るのも珍しい。って言うか初めてみたぞ。一体どうしちまったんだ?
そんな事をぼんやり考えているうちに下校時刻となり、いつものように、俺たち五人は一緒に駅へ向かっている。さやかと美由、福居は並んで歩いており、その後ろから俺と夏美が歩くいつものパターンだ。いつもは俺を敬うことなく罵声を浴びせられるのだが、今日はずっと沈黙だった。二人黙って前を歩く三人衆についていくが、俺ってこういう雰囲気って苦手なんだよな。なにか会話を探さないと。
「なあ」
「何よ」
夏美は俺をチラ見し、食べ物じゃない事を悟った鯉のように直ぐに視線を戻してしまった。会話終了ですか? いつものテンションと明らかに違うな。
「なあ、今日は随分おとなしいじゃないか。どうかしたのか?」
「どうでもいいでしょ、そんな事。会長には関係ないでしょ! 私だって考え事くらいするわよ。それとも何? そんなにおかしい訳?」
一瞬いつもの逆切れテンションに戻ったが、またすぐに前を向き溜息を漏らす。
「おかしいって訳じゃないけどな、なんかいつもと様子が違ったからさ。どうした? って思ってよ」
「まあ、会長に言ってもしょうがないんだけど、そこまで懇願してるなら相談してあげても良くてよ。ありがたく思いなさい」
どこぞやのセレブのように嘲弄の顔で俺を見つめるが、別に懇願なんかしてねえって、それにありがたくもないぞ。
「なーに、なんか言った?」
横を歩きながらガンを飛ばし、脇腹を肘で小突かれる。
「まあ、本当にたいしたことじゃないんだけど、三日位前から変な夢を見ちゃうのよね」
「変な夢?」
「そう、今でもはっきりと覚えてるんだけど、知らない男の人がでてきて……」
夏美によると、この三日間、夢の中にまったく知らない男が出現し、あたなはこの世界にいるべきではない。あなたは私たちの希望。こちらの世界に来て助けてください。みたいなことを毎回言っていたと言うのだ。俺は、
「まあ、夢ってのは得てして訳のわからんものだ、ずっと前に読んだ小説かなんかの内容をふと思いだしたんだろうよ。気にするこたあない。明日には忘れてるだろ」
楽観視を決め込んで全然心配していない俺を見て、ちょっとムクレづらになった夏美は、
「もういいわよ。あんたに話をした私がバカだったわ」
と、アヒルみたいな口をしてプイっとそっぽを向いてしまった。
やれやれ、夢の話でムクレられるとはね……まあ、明日になれば本当に忘れてるだろうよ。
そんな会話をしているうちに駅に到着し、それぞれが家路についた。

