しばらく全員で探査するも何も発見できずだ。って言っても当然だろ、そうそう不思議なことなんざ起きないんだよ。
「なんにも出ないわね。本当はこの辺に血だらけの女の人が立っているはずなんだけど」
 夏美は校舎側ではなく、その下にはグランドへ続く通路がある方の窓を見つめ、
「まっ、今日はお休みの日かもね。あっさり見つかっちゃったら有難味がないものね。今度また探しにきましょう。でも、とりあえず、福居くんこの辺を中心に撮ってくれる?」
「オーケー」
 福居は夏美を含め、集中的に窓のあたりを撮影するが、おい、夏美。幽霊なんぞに有難味はないし、こんなイベント何回もやってられるか。
夏美の命により、窓周辺を撮影しまくっていた福居は、画像を確認しながら、
「うーん。特に変なものは写ってないよ。いたって普通だよ。窓に人の顔が映るなんて期待してたんだけど」
「見せて」
 夏美は、福居からカメラを受け取り確認し始めると、
「確かに何にもないわね。噂が本当なら、ここに地縛霊として写ることもあると思うんだけど……」
「だから言ったじゃないか。幽霊なんてのは最初からいないんだよ。見たのは気のせいか造り話だろ」
 そう言って俺は、幽霊が見れずガックリきている美由以外のメンバーを見渡す。
「しょうがないわね。生徒会室に戻りましょうか」
 諦めた表情で夏美が美術室のドアを開けよとした。
 その時――。


 バタン


 遠くの方で、扉がゆっくりと閉まるような音がした。
「にゃ、なんの音にゃあ?」
「ドアが閉まる音みたいだったわね」
「ひいい、怖いですう」
 今度は俺にしがみつく美由。若干大きめの胸が俺の腕に密着し、これはこれで悪い気がしない。なんて事を考える前に、あの音は何なんだ? この校舎には、俺たちしかいないはずだ。厚木が残っているだろうが、東校舎の職員室にいるはずだし、じゃあこんな夜に一体誰だ? ドアが風で勝手に閉まったのか?
「結構近いよ。図書室のあたりだ」
 福居の言葉に全員で図書室方向を見つめた。図書室はこの廊下の先で同じ三階にあるのだが、視線の先には暗闇しか見えない。
「行ってみましょう」
 夏美はその方向に向かって歩きだし、俺を含め全員が夏美の後を追い、二分もかからず俺たちは図書室の前に到着した。
「閉まったのはこのドアか?」
「そうみたいだにゃあ、理科室とか他の部屋は普段鍵がかかっているにゃあ」
 さやかは色んな事を知っているな、などと感想を言っている場合じゃない。
「でも、このドアだとしたら、勝手に閉まるってありえると思う? 窓が開いてないから、風で閉まるってことは考えられないんだけど。とりあえず、入ってみましょうか?」
 心なしか夏美の顔が緊張しているように見えた。好奇心旺盛で行動力もすごいが、やはりイザとなったら怖くなるのだろうな。
 ゆっくりと夏美がドアを開け、全員が続きあたりを見渡す、暗くてよく分からないが、誰かがいるという気配はない。
俺たちは両サイドの二メートルはあろうかという本棚の通路を奥へと進む。部屋の奥にはソファーが置いてあり、本をくつろぎながら読めるスペースがあるのだ。夏美の後をさやか、福居がそれに続くが、俺は美由がひっついているので進みが遅い。懐中電灯は夏美が持っているため俺の周辺は暗闇につつまれており、本棚によって月明かりも遮られほぼ手探り状態だ。俺と美由以外は先に行ってしまい時折建物の軋む音が聞こえるだけで物音もしない静寂の世界。普段の学校の喧騒とは明らかに別の雰囲気が漂い別世界に来てしまったような感覚で、少しだけミステリアスだな。
 などと所懐に耽っていると――。


 ドン


 真後ろで何かが落ちるような音がし、瞬間的に振り向くが誰もいない。