三時間後、下校時間はとうに過ぎ辺りは真っ暗になったが、俺たちはまだ煌々と照らす蛍光灯の下生徒会室にいる。今度の市役連の資料を作ると言って、夏美が厚木に無理矢理頼み込み居残ったのだ。ちなみに市役連とは市内の県立高校生徒会が集合し、月一回運営方針やら行事なんかの報告会議を行うものである。
「じゃあ、行きましょうか」
嬉しそうにハシャぎ、懐中電灯を持った夏美を先頭に俺たちは生徒会室を後にした。真っ暗な廊下は普段見慣れない光景で、これだけも相当薄気味悪いぜ。
生徒会室は西校舎と東校舎を結ぶ渡り廊下の二階にあり、一階は下駄箱で、三階は文化部の部室となっている構造だ。
「まずは一階から見回るわよ」
夏美の言葉に異論はなく、俺たちは真っ暗な階段を降り、西校舎一階へと向かう。普段何気なく行き来しているが、夜ともなるとその雰囲気は一変するもんだ。
「まっ、真っ暗ですね。やっぱり怖いですぅ」
美由は夏美にしがみつき、挙動不審に周りをキョロキョロと見渡していた。
「楽しみだにゃあ、オバケさん、たくさんいるかにゃあ」
先頭で両手を回しながらさやかは実に嬉しそうだ。
夏美はまるで遠足にでもやって来た小学生の様に目を輝かせ、
「探検するからには、出てくれないとね。福居くん、カメラは持ってきた?」
「バッチリさ、夏美さん。バッテリーも充電してあるしね。試しに撮ってみようか?」
福居は夏美と美由に向かいシャッターを切り、画面を確認すると、「あっ」と声をあげ、真剣な顔になり、
「なっ、何か光のようなものが写ってる……」
「はっ? 何言ってるんだ。まさかいきなり心霊写真でも撮っちまったとか言うんじゃないだろうな?」
俺はひやかし半分に画面を覗き込んで見ると、画面の中には中央に夏美と美由が写っているが、右上の方に赤い発光体のような光が尾を揺らしたような形ではっきりと写っているじゃねえか。
夏美は画面をまじまじと見ながら、
「これって、いきなり心霊を撮っちゃたって訳よね?」
「ひえ、ひいい」
美由は気絶しそうになり、その場にしゃがみ込んだ。
「すごいにゃあ、オバケさんだにゃあ」
さやかは嬉しそうに、画面を見つめ、
「もっといっぱい撮るにゃあ」
そう言うと、福居からカメラを受け取り、あたりかまわずシャッターを切りまくり、周囲にフラッシュが光りまくった。
「もうやめろ、さやか」俺が制止すると、
「わかったにゃあ、やめるにゃあ」
おとなしく今撮った画像を確認し、
「何も写っていないにゃあ、オバケさんが写ったのは最初の写真だけにゃあ」
ちょっと寂しそうだが冷静に考えろ、オバケなんかいるわけねえ。
「きっと、ガラスかなにかにフラッシュが反射したんだ。そうに違いない」
俺は自分に冷静になれと指令を下してから考える。幽霊なんぞの存在を信じてたまるか。そんなのはテレビだけの存在だ、全ての現象はつきつめていけば科学的に解決できるはずなんだ。たぶん。
「そうこなくっちゃ、さあ、次に行くわよ。福居くん、どんどん写真撮ってね。来月の生徒会誌の特集はこれで決まりね」
夏美は、そう言うと暗闇の中を闊歩して行き、
「あのう、もう帰りませんか。暗いの怖いですぅ」
今度はさやかにしがみ付いている美由。
「だめよ、美由。幽霊の正体をつきとめるの。さっきのはただの発光体でしょ。本物を探さないとね」
夏美はさらにテストで満点をとった子どものように笑顔全開だった。
それから俺たちは一階、二階と順番に回ったが、さっきの写真以降何も変化はなくただ暗闇を行進するだけとなっていた。三階に到着する頃には暗さに目も慣れてきたが、誰もいない学校はやっぱ薄気味悪いな。
「あそこが美術室ですよねぇ。夏美さあん、本当に入るんですかぁ、入るの嫌ですぅ。怖いですぅ」
「何言ってるのここまで来て、じゃあ美由は一人でここで待ってる?」
「それもいやですぅ……ううっ……一緒に行きますう」
もはや美由は半泣き状態でしぶしぶ同意し、幽霊が墓場を徘徊するようにフラフラと歩き出した。
俺を先頭に美術室に入ると、月の明かりがかすかに差し込んでおり、訳の分からない上半身だけの彫刻やイーゼルなんかの輪郭は確認できるが、ほぼ見えないと言ってもいいだろう。
一人で歩き回っていたさやかは何かにぶつかったらしく「にゃ?」と疑問の声を上げ懐中電灯を顔の前方に照らすと、目の前にの白い顔をした外国人風の彫刻と目が合う。
「うにゃあああー」
さやかの悲鳴が美術室に響き、こだまさえ聞こえるぜ。
「おいおい、さやか、そりゃ彫刻だ。ビックリしすぎだろ」
腰を抜かして床にしゃがみ込むさやかに半分呆れながら言うと、
「びっくりっしたにゃあ、いきなり顔が目の前に現れたにゃあ」
「現れたんじゃなくて、最初からそこに置いてあったんだ。お前が近づいていったんだろうが。それより、大きな声上げると誰かに見つかっちまうぞ。もう少しボリュームダウンだ」
「わかったにゃあ、静かにするにゃあ」
そう言って両手で口を抑えるジャスチャーをするが、そりゃあ、あの高名な三猿の「言わざる」にしか見えんだろ。
「じゃあ、行きましょうか」
嬉しそうにハシャぎ、懐中電灯を持った夏美を先頭に俺たちは生徒会室を後にした。真っ暗な廊下は普段見慣れない光景で、これだけも相当薄気味悪いぜ。
生徒会室は西校舎と東校舎を結ぶ渡り廊下の二階にあり、一階は下駄箱で、三階は文化部の部室となっている構造だ。
「まずは一階から見回るわよ」
夏美の言葉に異論はなく、俺たちは真っ暗な階段を降り、西校舎一階へと向かう。普段何気なく行き来しているが、夜ともなるとその雰囲気は一変するもんだ。
「まっ、真っ暗ですね。やっぱり怖いですぅ」
美由は夏美にしがみつき、挙動不審に周りをキョロキョロと見渡していた。
「楽しみだにゃあ、オバケさん、たくさんいるかにゃあ」
先頭で両手を回しながらさやかは実に嬉しそうだ。
夏美はまるで遠足にでもやって来た小学生の様に目を輝かせ、
「探検するからには、出てくれないとね。福居くん、カメラは持ってきた?」
「バッチリさ、夏美さん。バッテリーも充電してあるしね。試しに撮ってみようか?」
福居は夏美と美由に向かいシャッターを切り、画面を確認すると、「あっ」と声をあげ、真剣な顔になり、
「なっ、何か光のようなものが写ってる……」
「はっ? 何言ってるんだ。まさかいきなり心霊写真でも撮っちまったとか言うんじゃないだろうな?」
俺はひやかし半分に画面を覗き込んで見ると、画面の中には中央に夏美と美由が写っているが、右上の方に赤い発光体のような光が尾を揺らしたような形ではっきりと写っているじゃねえか。
夏美は画面をまじまじと見ながら、
「これって、いきなり心霊を撮っちゃたって訳よね?」
「ひえ、ひいい」
美由は気絶しそうになり、その場にしゃがみ込んだ。
「すごいにゃあ、オバケさんだにゃあ」
さやかは嬉しそうに、画面を見つめ、
「もっといっぱい撮るにゃあ」
そう言うと、福居からカメラを受け取り、あたりかまわずシャッターを切りまくり、周囲にフラッシュが光りまくった。
「もうやめろ、さやか」俺が制止すると、
「わかったにゃあ、やめるにゃあ」
おとなしく今撮った画像を確認し、
「何も写っていないにゃあ、オバケさんが写ったのは最初の写真だけにゃあ」
ちょっと寂しそうだが冷静に考えろ、オバケなんかいるわけねえ。
「きっと、ガラスかなにかにフラッシュが反射したんだ。そうに違いない」
俺は自分に冷静になれと指令を下してから考える。幽霊なんぞの存在を信じてたまるか。そんなのはテレビだけの存在だ、全ての現象はつきつめていけば科学的に解決できるはずなんだ。たぶん。
「そうこなくっちゃ、さあ、次に行くわよ。福居くん、どんどん写真撮ってね。来月の生徒会誌の特集はこれで決まりね」
夏美は、そう言うと暗闇の中を闊歩して行き、
「あのう、もう帰りませんか。暗いの怖いですぅ」
今度はさやかにしがみ付いている美由。
「だめよ、美由。幽霊の正体をつきとめるの。さっきのはただの発光体でしょ。本物を探さないとね」
夏美はさらにテストで満点をとった子どものように笑顔全開だった。
それから俺たちは一階、二階と順番に回ったが、さっきの写真以降何も変化はなくただ暗闇を行進するだけとなっていた。三階に到着する頃には暗さに目も慣れてきたが、誰もいない学校はやっぱ薄気味悪いな。
「あそこが美術室ですよねぇ。夏美さあん、本当に入るんですかぁ、入るの嫌ですぅ。怖いですぅ」
「何言ってるのここまで来て、じゃあ美由は一人でここで待ってる?」
「それもいやですぅ……ううっ……一緒に行きますう」
もはや美由は半泣き状態でしぶしぶ同意し、幽霊が墓場を徘徊するようにフラフラと歩き出した。
俺を先頭に美術室に入ると、月の明かりがかすかに差し込んでおり、訳の分からない上半身だけの彫刻やイーゼルなんかの輪郭は確認できるが、ほぼ見えないと言ってもいいだろう。
一人で歩き回っていたさやかは何かにぶつかったらしく「にゃ?」と疑問の声を上げ懐中電灯を顔の前方に照らすと、目の前にの白い顔をした外国人風の彫刻と目が合う。
「うにゃあああー」
さやかの悲鳴が美術室に響き、こだまさえ聞こえるぜ。
「おいおい、さやか、そりゃ彫刻だ。ビックリしすぎだろ」
腰を抜かして床にしゃがみ込むさやかに半分呆れながら言うと、
「びっくりっしたにゃあ、いきなり顔が目の前に現れたにゃあ」
「現れたんじゃなくて、最初からそこに置いてあったんだ。お前が近づいていったんだろうが。それより、大きな声上げると誰かに見つかっちまうぞ。もう少しボリュームダウンだ」
「わかったにゃあ、静かにするにゃあ」
そう言って両手で口を抑えるジャスチャーをするが、そりゃあ、あの高名な三猿の「言わざる」にしか見えんだろ。

