涙目になりそうになりながら、私は振り返った。
春雪…。
思わず名前を呼びそうになってこらえた。
「君、確か岩沢先生のクラスの子だよね」
私は少し違和感を覚えた。
確かに私は見た目が5年前とは変わってしまった。
でもそれはたいしたことではないし、普通なら私を私と認識してくれるのではないだろうか?
昔、ピアスをプレゼントした小学生だ、と。
でも春雪は全く私に気づかない。
「君、名前、なんだっけ」
「…黒川いろはです」
「黒川さん、か」
名前を聞いても表情一つ変わらない。
本当に初めて会った人のような態度だった。
「俺、今から帰るけど、傘、持ってないなら入れてくよ」
春雪は笑顔で言った。
その笑顔が優しくて、懐かしくて、愛おしくて。
また涙がこぼれそうになった。
「いいんですか?」
「別にかまわないよ」
そういうと春雪は傘を広げた。
男物の大きな傘だった。
「ただ、俺はちょっと寄らなくちゃいけないところがあるから」
私は黙ってうなずくと、春雪の傘の中に入った。
雨に感謝する気持ちと、私を思い出して欲しい、という気持ちがない交ぜになっていた。
春雪…。
思わず名前を呼びそうになってこらえた。
「君、確か岩沢先生のクラスの子だよね」
私は少し違和感を覚えた。
確かに私は見た目が5年前とは変わってしまった。
でもそれはたいしたことではないし、普通なら私を私と認識してくれるのではないだろうか?
昔、ピアスをプレゼントした小学生だ、と。
でも春雪は全く私に気づかない。
「君、名前、なんだっけ」
「…黒川いろはです」
「黒川さん、か」
名前を聞いても表情一つ変わらない。
本当に初めて会った人のような態度だった。
「俺、今から帰るけど、傘、持ってないなら入れてくよ」
春雪は笑顔で言った。
その笑顔が優しくて、懐かしくて、愛おしくて。
また涙がこぼれそうになった。
「いいんですか?」
「別にかまわないよ」
そういうと春雪は傘を広げた。
男物の大きな傘だった。
「ただ、俺はちょっと寄らなくちゃいけないところがあるから」
私は黙ってうなずくと、春雪の傘の中に入った。
雨に感謝する気持ちと、私を思い出して欲しい、という気持ちがない交ぜになっていた。

