「とにかく僕はまだ納得がいっていません。君の回答をみて偽りがないか、確認してあれば先生に言うつもりです」
「それは1限の時にしたけど...」
「いえ、あなたの目では見落としがあります。それに僕が納得と言いましたよね?とにかく回答用紙を今すぐに持ってきて来てください」
流石にムカっ。
「私だって今お昼食べてるんだよ。後でじゃダメなの?」
「ダメです。持ってこないと言うのならば僕が ─────」
「はい、そこまで!」
田中君の声を遮ったのは、女の子の声で夏葉の声とは違った。
私達2人の肩をポンと叩いた。
「田中君、先生が呼んでたよ?委員会の事かな?今すぐにって」
「なんと、そうですか...。ならば仕方ない。咲宮さん、回答用紙は放課後直接取りに伺います」
田中君はそう言って眼鏡をくいっと上にあげて、校舎の方へ小走りして行った。
私と田中君の間に入ってくれた女の子。
クリクリとした大きな目にフワフワのセミロングヘア。何とも可愛らしい女の子。
「嘘ついちゃった」
「...え?」
「先生が呼んでるってのは嘘なの。あっちでご飯食べてたら2人が見えて、咲宮さん困ってる感じだったから」
えっと、つまりこの子は助けてくれたってこと...?
見たことない...。
こんなに可愛い子が居たのに今まで気づかなかった。
「咲宮さん、私の事知らない?一応、同じ委員会なんだけど」
「えっ!ご、ごめんなさいっ!私、どうやら視野が狭くて...」
「あはは、クラス離れてるもん。仕方ないよ。1組の髙橋やよいだよ」
そう名乗る彼女は可愛く笑った。
「ありがとう...助けてくれて」
「ううん。きっと田中君相当悔しかったんだね」
入学してからずっと1位だったんだもんなぁ。私が言えることじゃないけど、悔しいに決まってる。
