夏葉のやってるテキストがもう少しで終わりそうな頃、リビングの扉が開いた。
「ただいまー」
「おかーさん!」
本を読んでいた奏多君がソファーから飛び降りて扉の前の人影に駆け寄る。
「かなねー、かなねー、ちゃんとしずかにしてたよっ!」
「あらそうなのー、えらいわね」
夏葉がしていたように奏多君の前にしゃがんで頭を撫でる。
見ていたら目が合った。
「こ、こんにちは!お邪魔してます!」
思わず立ち上がってしまった。
そのおかげで顔がよく見えた。
大きな目に長い睫毛。それに白くて綺麗な肌。二次の母親とは思えない外見。
すごく綺麗な人。
「こんにちは。可愛いお嬢さんね。彰人の新しい友達?」
「はいっ!同じクラスの咲宮美月です」
「初めまして。彰人と奏多の母の京華です。おばさんとか言われるの悲しいから名前で呼んでくれると嬉しいな」
そう折原君のお母さん...京華さんは優しく微笑んだ。
「京華さん、お久しぶりです!」
「なっちゃーん!いつ以来よ〜。そう言えば伶太とくっ付いたんだって?」
「えへへ、実はそうなんです」
普段からフレンドリーな夏葉だけど、お母さんとも仲がいいんだ。
「あっ、じゃあ前に話してくれた子ってもしかして、美月ちゃんのことっ?」
「はいっ、そーですっ」
何を話したかは分からないけど、夏葉と京華さんの間で私の話題があったのかな?
「皆、ご飯食べてくでしょ?」
「え、いいんですか?私、京華さんのご飯大好き♡」
えっ、いいのかな。
私ここに来るの初めてだし図々しくないかっ?
「咲宮、食べてって。母さん、逆に断ると落ち込むから」
コソッと耳打ちしてきたのは折原君。
それだけを言って、京華さんが持って床に置いたままのビニール袋2つを持ち上げて食卓に置いた。
大量...。たぶん私達がいることを知ってて材料買ってきてくれたのかな。
