R e : Y o u



「やっぱり美月の部屋って綺麗〜」


飲み物を用意してリビングから部屋に戻ると美加子が部屋を物色していた。


生活感のない家だけど、自分の部屋だけが帰る場所のような気がする。



折りたたみ式の小さいテーブルを挟んで向かい合って座った。
美加子はお気に入りのハートのクッションを胸に抱いている。

お互い飲み物を飲んで一息つくと美加子が口を開いた。



「あのね、こないだ話した美加子の...好きな人の話、覚えてる?」


「うん。塾の先生だよね?」


確かあの時はすごくビックリしたな。
大人を好きなんてすごいなって。



「でね、次のテストで全教科80点以上取ったらメアド教えてくれるって約束したのっ。だから美月に勉強教えてほしくて...」


美加子はクッションを抱きながら頬を少し赤らめている。

可愛いな...。
美加子も恋する女の子なんだなぁ。



「もちろんだよ!先生のメアドゲットしよう!」



私も今回のテストは頑張るって決めたしそれぞれ理由はあるけど目標は同じ。



「あ、てか美加子の好きな先生ってどんな人なの?詳しく聞かせてよ」


こないだは聞けなかったし、実は結構気になってた。



「先生って言ってもアルバイトでまだ大学2年生なの」


てっきり先生だからもっと年上かと思ってた。大学1年生なら...今年で22?



「美加子が2年の春休みに高校生にナンパされてる所を助けてもらって。そしたら春休み明けに塾で再開して。それで好きになったの。まだ中学生だからって相手にされないけど、しつこくメアド聞いてたら条件出してくれて。だから美加子絶対全教科80点以上とる!」



恋をすると、そのために何でも頑張れちゃうものなんだなぁ。

美加子...すごいなぁ。



「うん、私も協力する!」


「ありがとう。そうだ、美月は?恋してないの?」


「わ、私っ!?私はー...まだ恋ってどんなものか分からなくて」



「美月は純粋だなぁ」



美加子はうふふと笑った。
私が恋をしたことがあったら、夏葉とか美加子とかに話を聞くだけじゃなくて、アドバイスとか出来るのにっていつも思う。



「恋って何だろうねぇ...ちゃんと考えると不思議...」


「でも美加子は私と違って恋沢山してるでしょ!どんなのか教えて!」


美加子には2年生の時、私が知ってる範囲で確実に2人は彼氏がいた。

だから自信を持ってそう言えるのだ。



「うーんと、美加子は先生好きになってから、塾嫌いだったけど今では行くのが楽しみだし、勉強も頑張ろうって思う。先生のこと考えると会って話したいなぁって思うし、嬉しいし、色々考えると泣きそうにもなっちゃう...他の子と楽しそうにしてるとモヤモヤするし。それが恋なのかなー...」