全てを話し切ると、姉の目がすっと細められた。扇を閉じると、それが合図であるかのように女房たちはさっとはける。
「貴方が悪いわね」
「……おっしゃる通りですよ」
「全く、我が弟ながら情けないわ」
その言葉に和春はさらに居心地を悪くさせた。何年経っても頭が上がらないのは彼女の言葉が正論を貫いてくるからだった。
「貴方の想い人のことは会ったことがないから何とも言えないけど、きっと彼女は自分を責めているんじゃないの」
「反省するべきは俺の方なのに?」
「女っていうのはね、待つことしかできないのよ。それが貴方から距離を取られてしまっては会いにいくことすらも叶わない。会いに来てくれないのは自分に悪いところがあったんだって思うしかないじゃない。馬鹿ねえ」
姉の発言に、返す言葉はなかった。
「俺はどうしたらいい?」
「それを聞くのがもう駄目。……でも、まあ可愛い弟に貸しを作ってあげてもいいわ。貴方はまず自分が今どうしたいのかを真っ先に考えなさい。周りでも彼女でもなく貴方の考えよ。そしてそれを実行するの。悩んでる暇があるのなら行動しなさい」
「分かった」
「素直でよろしい。それから、貴方は彼女を可哀想だと思ってる?」
「可哀想って……そんなわけないだろ」
「じゃあそれでいいじゃない」
「え」
一瞬、和春は何を言われたのか理解できず、しばらく静止する。
「貴女が彼女のことを可哀想なんて思ってたら一発殴って差し上げるところだったわ」
「それは困ります」
「良いじゃないの、減らないんだから。ま、でも、可哀想だから守りたいとかそんなとんでもない理由じゃなくて良かったわ」
ふ、と優雅に微笑んだ姉は弟の成長を喜ぶかのようにそう告げた。姉は弟の中に確かに存在する彼女への愛を感じ取っていた。
「何だか話足りないわね。今日はこのまま泊まっていったらいいわ。そうしなさい」
この時点で和春には断るという選択肢は残されていなかった。半ば渋々といった形で了承すると、周囲はもてなしの為に騒がしさを取り戻した。
幾分か気分もすっきりしたのか、和春の表情は来た時に携えていた陰鬱さを感じさせなかった。姉弟水入らずでたわいのない話をしていると、途中で姉の夫が帰ってきた。そこからは3人で歌の読み合いをするなどして夜は更けていく。ふと、次に泊まる時は春姫と歌の贈答をしてみても良いと思った。

