翌日、紅葉の元へ知らせが届いた。
「本当ですか……!ようやく、会えるのですね」
横になりながら涙ぐみ嬉しそうに笑う紅葉を見て、中将も安心する。長い間会えていなかった藤子に会えるとあって、紅葉は幾分か元気を取り戻したようだった。
紅葉はずっと考えていたことを中将に投げかける。
「あの、藤子様は彼の方とは一体どのような関係なのでしょうか」
「和春のことか。あの様子だと恋人とまではいってないんじゃないか?どちらも好意は持っているみたいだが」
「藤子様も?」
「詳しくは聞いていないが手紙のやり取りをしているようだよ。藤子も大分表情が豊かになった」
中将も詳しいことを聞いていないようで、紅葉は少し残念に思ってしまう。やはり直接聞くのが良いのだと思った。
それから話は変わり、紅葉の体調が良い時に別荘へ向かうこととなった。
曇りがなく、月が三日月になろうかという夜だった。
ガラガラと車が静かに走る。穏やかな話し声が車内で響いていた。
「体調はどうだ」
「お陰様でだいぶ良くなったような気が致します。それもお二人のお陰だと思うと感謝で一杯です。ありがとうございます」
「それは嬉しい限りだ。さて、もう少しで着くよ」
その言葉に表面上取り繕っていた紅葉は喜びと不安で一杯になる。もし彼女が自分を恨んでいたら……なんて考えなくても良いことばかり浮かんでは消えていく。
「不安か」
中将の問い掛けに、ややぎこちなく頷く紅葉。
「彼女の優しさは貴女が一番良く分かっているのでは?」
「それは……そう、なんですけれど」
「きっとあちらでも落ち着いていないのだろうね。手紙も浮き立っているのが伝わってきたよ」
「お前たちは小さい頃から一緒だったもんな。これからも世話かけると思うがよろしく頼む」
「……はい」
二人の言葉に紅葉は勇気づけられる。会ったら初めに何と声をかけようか、変わらない美しさでいらっしゃるのだろうかと前向きなことを考えることにした。
車が停止し、案内されるままに廊下を進む。前を行く和春が立ち止まり、中へ声を掛けた。以前と変わらない床を叩く返事の仕方に紅葉の目頭は熱を持つ。
「じゃあ俺は中将殿とあちらの部屋に居るよ。何かあったら呼んでくれ」
「ありがとうございます」
恐る恐る部屋へと足を踏み入れる。月明かりは無く、手元の明かりと部屋の明かりが頼りだった。
「藤子様……?」
そっと声を掛けると布擦れの音が聞こえた。その方向へと進むと見覚えのある姿が視界に入る。
恥ずかしそうに、静かにこちらを見つめる姿は以前と何ら変わりなく紅葉は我を忘れて彼女の元へと駆け寄った。
「藤子様!……本当に、藤子様なのですね?もっと良く顔を見せてください」
紅葉は手を伸ばして彼女に触れる。左大臣邸に居た時よりも、春姫は健康的に見えた。大事にされているようで、彼女の周り全てが整えられていた。

