静かだな~
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「だからいつも言ってるじゃない」
「うるせぇ」
「何で分かってくれないの?」
「うるせえって言ってんだろ」
ドンッ
パッリーン
「…………………………」
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いつもと違うと
分かっていたのに
止められなかった
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「お母さん?」
「…………」
「おっお父さん」
「っ」
「救急車呼ばなきゃ」
「梨琉呼ばなくていい」
「どうして?このままじゃ」
「大丈夫お父さんが
連れていくから」
「梨琉も行く」
「すぐ帰ってくるから」
「でも」
「でもじゃない
お父さんの言うことを
聞きなさい」
「…はい」
「明日の朝
話をしよう」
「分かった」
_________
もしあの時
言うことをきかなかったら
あんなことには
ならなかったのに
_________
「お父さん」
「梨琉おはよう」
キョロキョロ
「お母さんは?」
「お母さん死んじゃった」
「どうして?」
「梨琉お父さんの
言うこと聞ける?」
「うん」
「いい子だね」
ガタッ
「お父さん?」
「梨琉昨日の事
誰にも話しちゃ駄目だよ
お父さんとお母さんが
ケンカをしたことも」
「分かった」
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もし
誰かに相談してたら
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バキッ
「痛い…痛いよ~」
ドンッ
「お父さんっ 痛い」
パッリーン
バンッ
「やめっ」
ガチャ
片付けなきゃ
ガチャ
「っ」
「梨琉仕事に行ってくる」
「いってらっしゃ~い」
「いってきます」
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お母さんに
似ていなかったら
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ガチャ
ビクッ
「梨琉起きてる?」
「…………」
「寝てるの?」
「まぁいいや寝てても
できるしね」
ガサッ
「あんなに小さかったのに
こんなに成長して」
ゴソゴソ
「っ」
「起きてたの?」
「やめっ」
「抵抗するの?」
「っ……ううん」
「梨琉はいい子だね」
怖い
「大丈夫痛くはしないから
触るだけだから」
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お父さんと
血が繋がっていたら
こんなことには
ならなかった
かもしれないのに
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「本当になにもないですか?」
「何もないですよ」
「本当ですか?」
「何もないです」
「ではどうして
皿の割れる音や
物が落ちる音がするんですか?」
「……」
「応えられないということは
虐待をしてるん
じゃないですか?」
「違いますよ~
私が皿を割ったり
掃除をして物を落としたり
してるだけです」
「それならどうして
応えられないのですか?」
「お父さんが知らないだけ
ですよ~
お父さんに言って
ないですから~」
まさかこんなところで
作り笑顔が役にたつなんて
嬉しいような嬉しくないような
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私が弱くなかったら
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「梨琉ありがとう」
「ううん」
「お母さんに会いたい?」
「会いたい」
「じゃあ出掛けようか」
「うん」
「準備をしてきて」
「分かった」
バンッ
「お父さんここにいるの?」
「ここにいるよ」
「この土のなかに?」
「そうだよ」
「埋めたの?」
「そうだよ」
「この事も秘密?」
「二人だけの秘密」
「分かった」
「梨琉はいい子だね」
「ねぇ梨琉」
「?」
「ここでしよ」
「えっ」
「車のなかで」
「…分かった」
「ハァ…ハァ…」
「……………」
「瑠璃」
「っ」
「瑠璃…好きだよ」
「……私も…好きだよ」
「ごめんね
すぐそっちに逝くから
瑠璃」
「っ」
私を一人にするの?
お父さん
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「白黒梨琉さんですよね」
「はい」
「白黒瑠璃さんと
冴沼修さんについて
お聞きしたいことが
あるので
署までご同行願います」
「はい」
「どうぞ」
本当はもう少し早かった
だけど延長してほしいと
お願いした
バンッ
私は立派な共犯者
見て見ぬ振りをした
罪はきっと重い
それでも
不謹慎だけど
良かったって思ってる
もし
あんなことが
起こらなければ
亜香里や純や冴崎や
クラスのみんなに
会うことはなかった
私の事を知らない
隣の隣の県に
行かなかったら
あの学校に
通うこともなかった
冴崎に恋することも
なかった
もし
私が病気じゃなかったら
亜香里達に過去を
話していたのかもしれない
だけど
話してしまったら
きっと私が今まで
隠してきた感情が
抑えきれなくなる
一緒にいたい
一緒に笑いたい
会いたい
今までお世話になってきた
人達に言いたい
言葉で
手紙じゃなくて
ちゃんと皆の前で
ありがとう
ごめんなさい
さようなら
この言葉だけでいいから
自分の口で
伝えたい
もし叶うなら
もう一度だけ
会いたい

