先ずは、身だしなみをチェックしに、お手洗いへ。
はやる気持ちを押さえつけ、お手洗いを、きちんと済ませて、ミラーで全身をチェックしていく。こういうイベントでは、清潔感が、何より大事な気がする。
「チェックスタート。」

サイン会や、握手会では、第一印象が肝要だからだ。
入学式前にあった、入学のための入試での面接官に会う前より、何百倍は緊張するくらいだ。

髪型は奇抜な髪型ではない。至ってシンプルな、セミロングをまとめた、ポニーテールだった。
前髪は、眉より少し短めのストレート。

ちょっぴり、雨の日には、くねくねになって、ストレートを保つのが、大変なのが、たまに傷ではある。
今日は、晴れていて、気にしていた前髪も、ストレートパーマを、あてたかのように、ストンと落ち着いている。
「アホ毛もないし、前髪もよし、っと。」

次は、制服のリボン、曲がってないか、きちんとボタンが外れていないか、確認した。
この辺りの制服では、珍しくはない、可愛い型のシンプルな柄の入ってはいないタイプの朱色のリボンだ。
「リボン、よし。」

私立青龍学院には、美術科があり、特待生や、留学生制度が盛んだ。
制服のデザインも、いくらか変遷してはいるものの、最新作のデザインは、美術科の生徒達から、募集を募り、ナンバーワンに輝いたデザインを選んだそうだ。設立50周年から、変わっていない。

青空の様に明るいパステルカラーのワンピース。
柄は、同系色で纏めた、チェック柄。
ぼんぼりの様に袖の部分が丸く膨らんだ白いブラウスに、ロゴ入りの白い靴下。

「ブラウスに髪の毛ついてないみたい。制服にシワもないし、大丈夫みたい。制服よし。靴下よし。」

靴に、汚れはない。ピカピカに、前日夜から、つや出しまで使って磨いてきた。入学式以来、引き出しにしまいっぱなしだった靴磨きが、かなり役にたってくれた。
「靴もよし、っと。」


まわりに、呆れられるぐらいは細部まで、チェックした。
初めて、結婚とかの挨拶にいく男性みたいに、今朝は早起きしてしまった。放課後が来るのが待ち遠しくて、仕方ない位腕時計の針を見つめた。
あと、忘れ物が1つ、笑顔だった。

「笑顔、よし。」私は、リップクリームを塗り直すと、全身鏡の前で、くるっと一回転して、後ろをチェックして、ホールに向かった。