フェンスの外で、私は声も出さずに泣き続けた。そうしてどれくらいの時間が過ぎたのだろうか、気がつけば辺りは暗くなっており、遊んでいた親子連れももういなくなっていた。

孤独だ。ふと辺りを見渡したからだろうか、少し客観的な目線に立てた私は、私をそのように評した。

「そんなに泣いてたら、メイク落ちるよ?」

久しぶりに聞いた気がした声だった。

「…鵜児くん…何で…?」
「よく寄るコーヒーショップがこの近くにあるからね。チェーン店なんだけど。…はい、これ」

鵜児くんが手渡したのは、そのコーヒーショップのものであると思われるテイクアウト用のコーヒーだった。

「えっ…?」
「かなりお悩みみたいだから。ひとまずこれ飲んで、落ち着きなよ」
「うん…ありがと…」

鵜児くんに全てを話すと、案の定困った顔をされた。知り合いの父親が逮捕されたなんて話、いきなり聞いたら誰でも困惑する。

「…ゴメンね、嫌なこと聞いちゃって…」
「いいの。先輩が関係してるんだから、鵜児くんも遅かれ早かれ知ることになるでしょ?」
「まあ、そうだけど…」

これから夏に向かっていくのだが、まだ夜は寒く、コーヒーの温かさが心地よかった。

「…戻らないの?」
「戻るって…?」
「鴫城先輩達の所に」
「…無理だって。だって、突然何も言わずに出てきちゃったんだよ? 自分でやった結果だけど、合わせる顔がないし…」
「そんなことないって」

テイクアウト用のカップを包むように持つ私の手を、鵜児くんの手がさらに包んだ。