「どうしたの?」
「あっ、えっと…」

もう、鵜児くんをフってしまうのは決まっていた。なのに、言葉が詰まってしまう。

「こ、この前の返事…したいんだけど、時間ある…?」
「…うん」

ついに来たか、と、鵜児くんは覚悟を決めたようだった。

屋上に呼び出し、二人で向かい合う。…こんなこと、学生時代にしてこなかったからもうないと思っていた…。

「あの…それでね…」

場所を変えたら言いやすくもなるか、なんていう甘い考えは簡単に打ち砕かれた。体が先端から震えだし、下の先にまで乗っていた言葉も喉の奥へと引っ込んでしまう。

「う~んと、その…」

ダメだ。呼び出した手前、こんなこと言えるわけないけど、今日は返事ができそうにない…。

「…いいよ。言わなくても」

いつもの優しい声が、屋上を吹く風に乗って私に届いた。

「えっ…?」
「想像できてるから。…僕のこと、フっちゃうでしょ?」
「…」

当たり。だからこそ、何も言えなかった。

「僕、知ってたんだ。本当は僕より好きな人がいるって」
「…それが誰かは知ってるんだよね…?」
「うん。あえて言う必要はないから言わないけど」

鵜児くんが空を見上げる。

「…これは、僕がけじめをつけるためにやったことなんだ。ちゃんとフられないと、前に進めないから」