「あの、ありがとう。」

「……何が?」

「尊から聞いた。」

「……別にあんたの為じゃない。 ああいうやり方は好きじゃないし、それに本気でぶつかってもないくせにあんたに手を出してんのも気に入らなかったしね。」

「…………。」



意外だった。


笹野さんがそんな風に思ってたなんて……。



「何その顔。 なんかムカつくんですけど。」

「いや、その……本当ありがとう。」

「だからあんたの為じゃないって言ってんじゃん。 って、何笑ってんの!? キモイから。 ってか豊から聞いたけど、なかった事にしたんでしょ? あんた馬鹿なの?」



笹野さんは気まずそうに教室に居る村雨さんたちを見ながらそう言った。



「馬鹿でも何でもいいよ。 守りたいものは守れたからいいの。」

「あっそ。」



笹野さんからはどうでもいいという顔をされた。


ちゃんと話した事はないし、尊の事でちょいちょい嫌がらせはされたりしたけど、嫌な人ではないんだなと思った。


半ばあしらわれる様に席に戻った。


「ちゃんとお礼言えた。」と尊に言うと、「良かったな。」と笑って言ってくれた。