それだけ人の顔色をうかがい、虐げられてきたからかと思うと、胸が痛む。

「ありがとうポック。
明日から、私たちも遅れを取り戻して、急いで塔に向かわなきゃね」

「ああ!」

夕食は、薪の火で焼いた、焼き魚だった。

火の加減を見たり、魚の焼き加減を見たりと、ポックはかいがいしく世話を焼いてくれる。

セレイアもポックに何かお返しがしたいが、できることもないのが歯がゆかった。唯一、ポックの寝床をきれいに整えてやることだけはしてみた。

―これっぽっちで恩返しには、ならないだろうけど。

食事が終わり、夜も更けてきた頃だった。

セレイアがそろそろ眠ろうとテントに向かおうとしていると、ポックが急に、弾かれたように顔をあげた。

「……!! 誰かの気配がする!!」

「え!?」

「こっちに向かって来てる! どうするセレイア!」