ポックは飛び去る前に、セレイアに着替えと毛布、温めたミルクと軽食、そしていざという時のための武器、槍を置いて行ってくれた。

毛布にくるまってミルクを飲みながら、セレイアはポックの存在のありがたさをしみじみと感じた。

なじんだ得物の存在も、心強い。

それでもポックの帰りを待つ時間は、ひどく長く感じられた。

陽が頂点に輝く頃、ポックが戻ってきた。

「セレイア~、大丈夫だったか~! ちゃんとお前の無事はみんなに伝えたからな~!」

「ありがとう、ポック! あなたのおかげですごく助かっているわ」

セレイアが感謝の意を伝えると、ポックは照れ臭そうに鼻の頭をこすった。

「異端のおいらにできることは、これくらいだからな…」

ポックの呟きに虚を衝かれた。

「…ポック、あなたは異端なんかじゃ―――」

「いいんだ。おいらは異端、それは生まれた時から変わらないんだから。さ、日が落ちる前に野営できる場所を探さなきゃな! さっそく行こう」

「…………そうね」

それ以上は何を言っても聞いてくれないだろうと雰囲気から感じたので、セレイアは言い募るのを諦めた。

ポックは、異端なんかじゃない。

部外者のそんなセリフは、慰めにもなりはしないのかも知れない。

それだけ長い間、ポックは異端であることに苦しんできたのだろう。

でも、これからはディセルも自分もいる。サラマスやシルフェだっている。異端だなんて思わずに接してくれる仲間がいる。

いつかそのことをわかってほしいと、セレイアは思った。