反射的に彼のもとへと駆け出そうとして、すぐに気が付いた。

ヴァルクスは険しい表情をして、あっちへ行けと腕を振っているのだ。

セレイアは悲しい気持ちになった。

『どうして? そっちに行ってはいけないの?』

ヴァルクスは何も言わない。

笑顔も見せてくれない。

全身で、セレイアを拒絶している。

『そんな……』

泣きそうになった時、声が聞こえた。

「――――セレイア」

自分を呼ぶ、声。

この声を、セレイアは知っている。

セレイアは思わず、声のした方を振り返った。

来た道、暗闇のトンネルの中だ。

そっちの方にも、よく見たら光があった。

それはこことは違い、銀色の光に満ちているようだ。

そのむこうに広がるのは、銀色に輝く、世界。

導かれるように、セレイアはその光に向かって歩き出した。

ヴァルクスの姿が遠くなる。

それは身を切られるように辛かったけれども、それでもセレイアは、自分を呼ぶ声の主を探したかった。

自分を呼び、求めてくれる声の主に会いたかった。



あなたは、誰――――?