…ここはどこだろう。

暗い、暗いトンネルの中だ。

物音は何も聞こえない。

セレイアはただよろよろと、萎える足に力を入れて、歩いている。

まっすぐ前に進んでいるのかどうかも、あたりが暗すぎてわからない。

不意に、暗闇の向こうに光が見えた。

その光が道しるべとなり、セレイアの足に力が戻る。

あそこに向かって行けばいい。

あそこまで行こう。

そう思うだけで心に力がわく。

しっかりとした足取りで、歩いて行く。

光はどんどん大きくなり、その向こうに美しい景色が見えた。

色とりどり、一面の花畑だ。

なんて美しい場所なのだろう。

もうすぐたどり着ける。

セレイアが足を速めた時、花畑の中にたたずむ人影をみつけた。

黒髪、黒い瞳を持つ、鋭利な美貌の青年だ。

彼のことを、セレイアは知っていた。

『ヴァルクス…!!』