事件は翌日の正午頃に起こった。

急な崖を、ロープを使って全員が登り終えたちょうどその時。

ひゅんひゅん、と風を切る音と共に、何かが一行を狙って来た。

矢だ――――と気づく前に、反射的に全員武器で弾いたのは、さすが皆それなりの武人である。

しかし、後ろは崖。矢は前から飛来してくる。身を隠すところがない。

見れば、目の前には渓谷をつなぐ吊り橋があり、その向こうから何者かが、矢を射かけてきているようだ。

一人ではない。

―ときたら、彼らの正体は間違いがなかった。

「くっ…レコンダム軍!」

ボリスが呻いた通りだった。

橋の向こうには、指揮を執るヴェインの姿が見える。

レコンダムの姿はない。

彼らは、セレイアたちの邪魔が入ることをあらかじめ予測していたのだろう。身をかわせない、実に厄介な場所で待ち伏せてくれたものだ。

今でこそなんとか防いでいるが、このままでは全員射殺される。