(だが、ボリスは人間だろう?)

心の中でそう言いながら、そんなことは恋を禁ずる理由にならないと、サラマスにもわかっていた。スノーティアスとセレイアを見ていれば、わかる。

(どうすればいい…って、どうして俺がそれを気にする?)

自分で自分がわからない。

シルフェのことを自分も好きだったのならいざ知らず、サラマスが好きなのは今も昔もディーネリアただひとりだ。

むしろ妹のように大切なシルフェが幸せになってくれるなら、それを喜ぶべきではないのか。

それなのに、二人の口づけを思い出すと、サラマスの胸はどうしようもなくもやもやする。

(なんなんだ、これ)

嫌なのだ。

何が嫌なのか、わからないし、考えたくもないが、とにかく嫌だ。

(だぁぁ~くそ!)

サラマスは寝袋にくるまりながら、胸のもやもやに一晩中耐えなければならなかった。