ポックの力はとても便利だ。

眠るためのテントも、寝袋も、セレイアとボリスには夕食まで用意してくれた。

この天上界にあって、人間界と同じあたたかい食事をとれることが、どれだけセレイアの心をほっとさせたことか。

先を行くレコンダムたちにはないことだろう。

その分でこちらの方が有利だといえる。

夜明けの頃に出発する予定とのことで、今夜は皆それぞれのテントに引っ込み、早々に就寝した。

しかし、そう簡単に眠れるものではなかった。

一部の者にとっては。

(……………)

ボリスは何度も寝返りを打ち、それでも寝付けずに、ため息を一つついて身を起こした。

レコンダムのこと。

シルフェのこと。

天上界のこと、理の領域のこと、…考えることがありすぎるのだ。

中でも一番に彼を悩ませているのが、シルフェのことだった。

この非常事態にそんなことでこんなに悩むものなのかと、自分でも呆れるくらいだ。

今までにこんな激しい恋をしたことは、なかった。

シルフェのことから考えを引き離そうと思ってテントの外へ出たのに、皮肉にも外には風に吹かれて夜空を見ながら岩に腰掛けるシルフェの姿があった。

その儚げな後ろ姿に、ボリスの胸は高鳴る。