不思議な雪に気を取られていたセレイアは、この時やっと、背中を包むぬくもりに気が付いた。

そして背後に視線を転じて―――

そこに見知った人の姿をみつけた。

「…ディセル?」

名前を呼びかけると、セレイアを抱きながら、セレイアと同じく空を見上げて呆然としていたらしい彼が、セレイアに視線を向けた。

二人の目が合う。

「……セレイア」

そう言ったきり、ディセルは何も言葉にならない様子だった。

ただ、セレイアを抱きしめる腕に、力がこもる。

ここがどこであっても、離さないとでもいうように。

(ディセル……)

白銀の世界に、二人はいた。

一面雪で真っ白だ。とめどなく、空からふわふわと降り続く雪。

そこにたたずむ彼の姿を見て、セレイアははっきりとここがどこなのかわかった。

彼の髪と、瞳と、同じ輝きを持つこの世界は。

(――――天上界)

紛れもなく、彼の故郷だと、そう感じた。