「人間界のお方はご存じないのも無理はありませんわ。
“理の領域”とは、ここ天上界の中心に存在する、神々でさえ足を踏み入れてはならないとされる領域のことです。そこは世界の核となる大切な場所。そこでは一切の神々の力が使えないといわれています。そのさらに中心に、“理の塔”という天を突く塔がそびえています。そこでは天上界に住むことのできる住人の管理や、世界のあらゆる理の知識を得ることもできるといわれています。
彼らがそこへ向かっている理由はおそらく―――彼ら人間を、この天上界の住人として“理の塔”に認識させること、でしょうね。今のままでは、彼ら異質なる人間たちは、ここにいることがやがてできなくなるのです。弾かれるようにして、人間界に戻されるでしょう。だから、そうなる前に完全なる住人として認識させてしまうつもりでしょう」

「……! そんなことになったら…っ!」

ボリスは思わず大きな声をあげてしまった。

レコンダムが天上界を荒らしまわる未来図が浮かび、ボリスは腹立たしい気持ちでいっぱいになる。彼は国主失格だ。民を捨て、自分だけ新しい場所を興味本位に侵略する。そんなことが許されてよいはずがない。

少なくともボリスは、そんな国主には絶対にならない。