「話が逸れてしまいましたわね。あなたたちは知っていますか? この度の扉の開放で、予期せぬ数の人間たちが、天上界に入り込んでしまったようなのですが」

憂いを含んだディーネリアのその声には、かろうじて立ち直ったシルフェが答えた。

「はい、それは―――――」

天上界へと入り込んだのは、おそらくエイフォーティク帝国の皇帝レコンダムとその配下であること。彼らが何らかの野望を持っているであろうこと。ボリスはレコンダムを討つために、彼を追ってはるばるここまでやってきたこと、など。

順序立てたシルフェの事情説明を聞いて、ディーネリアはふうとため息をついた。

「そういうことなのですね……。
わたくしは水鏡を使って彼らの様子を観察しています。
おそらく彼らはまっすぐに……“理の領域”へと向かっているでしょう」

( “ことわりのりょういき”…?)

ボリスにその意味がわかるはずがない。

よってシルフェに疑問の視線を送ったが、シルフェは深刻な表情で考え込んでいて、ボリスの視線に気付いてはくれなかった。

そんなボリスに気付いてくれたのは、ディーネリアだった。