「…まあよい。我が妻ディーネリアの頼みを聞いて、動いてくれていたのだろう? サラマス。私からも礼を言おう」

(えっ!!?)

サンディオスの放った一言に固まったのは、ボリスだけではないようだった。

サラマスも、シルフェも、びっくりまなこで絶句している。

おそらく同じ単語のせいで。

(我が妻と―――呼ばなかったか?)

ディーネリアは恥ずかしそうに身をよじりながら、幸せそうな微笑みを皆に向けた。

「そういえば、まだ言っておりませんでしたわね。お恥ずかしながら、わたくしたち、ついこの間結婚して、夫婦となりましたの」

鉛のような沈黙が、サラマス、シルフェ、ボリスの間に横たわっていることに気付かずに、サンディオスが朗らかに笑った。

「改めてよろしくな、サラマス、シルフェ…と、なぜ人間がこの場所に?」

サンディオスが急に厳しい視線をボリスに向け、てのひらに小さな雷を集め出したので、ボリスはたじたじとなった。

ディーネリアが事情を説明してとりなしてくれなかったら、どうなっていたことか。

サンディオスは…雷の神だということがわかったのは、収穫だったかも知れないが。

(それにしても、いったい何角関係なんだ…頭が痛い……)

いまだに沈黙しているサラマスの衝撃は相当なものなのだろう。彼に想いを寄せるシルフェとしても、単純に喜ぶことはできないようだ。