「そんなこと、何の問題にもならない。
セレイア、よく聞いて」

ディセルは抱きしめる腕の力を緩めて、セレイアと間近でみつめあった。

「俺が君を好きで、君も俺を好きなら、何をためらうことがあるんだろう。
ここで、ずっと一緒に暮らそう。
セレイアには辛い選択かも知れないけど…必ず、幸せにするから」

(ここで、ずっと一緒に、暮らす…)

甘やかな想いが、セレイアの胸に広がる。

トリステアに帰れないのは、確かに心残りではある。

だがきっと、夢でディセルがお告げを与えれば、大巫女様が次の姫巫女を立ててくださるはず。

フリムはわかってくれるだろう。

セレイアは、こくんと頷いていた。

「うん……」

幸せな気持ちが胸いっぱいに広がって、なぜだか泣きたくなった。

ディセルが首を少し傾けて、セレイアの唇に優しくキスをした。

ほのかなぬくもりが、全身を喜びに震わせる。

どこから見ていたのか、ポックが木陰から飛び出して、喜んであたりを跳ね回った。

氷の噴水も、きらきらと輝いて二人を祝福してくれた。