そんなこと、考えたくもないと思っている自分がいた。

セレイアは思った。

自分もディセルと同じ気持ちだった、と。

エイフォーティクで天上界の扉が開いた時、セレイアはただ、ディセルと離れたくないと思っていた。そばにいたいと思っていた。

(私は望んで、ここにいるんだわ)

すとんと、胸に落ちる想い。

セレイアは熟考の末ようやくすっきりした気分になっていたが、ディセルはその沈黙を自らの台詞の肯定と受け取ってしまったらしく、ぽつりとこんなことを呟いた。

「わかったよ、君の気持ちはわかってた……。
だって君は、ずっとずっと、たった一人の人を愛しているんだものね…。
明日にでも人間界に帰すから…今は食事の用意をさせてくれないか。
今日だけでもここに滞在してほしい」

「え………」

ディセルが何かを諦めたように、踵を返した。

その背中は弱々しく、覇気がまったくない。

遠ざかっていく、ディセルの背中。