セレイアが顔を上げると、彼は哀しげな瞳でこちらをみつめていた。

「俺、どうしても君と離れたくなかったんだ……。
だから、こうして君をこの世界に連れて来てしまった…。君の気持ちも考えず、無理やり連れて来てしまって、ごめん。
君は、人間だから、人間界にいたいに決まっているのに、そんなことも考えられなかったんだ…ただ、離れたくなかった。それだけだった。君が好きなんだ。離れるなんて、今も考えられない。考えたくもないよ。だけど…」

「…………」

ディセルの想いが、言葉が、あまりにもまっすぐにセレイアの心を射抜くから、セレイアは胸が詰まって何の言葉も返すことができない。

「だけど、君が望むなら、今からでも君を人間界に、返すよ……」

「……!」

ディセルの声は、とても苦しそうだった。

断腸の思いで口にした言葉なのだとわかる。

(人間界に帰る……?)

ディセルの言葉を、セレイアはじっと考えてみる。

ここを離れ、ディセルと二度と会えなくなって、…トリステアに帰る。