見知らぬ広間の中。

たたずむ運命の神の前に、銀色のたてがみの守護獣がいる。

そしてその隣には――

(えっ! ポック!?)

良く似た別人だと思いたかったが、他人の空似にしては似過ぎていた。

髪の色も、瞳も、羽も、大きさも、その表情も。

ポックそっくりの存在が、守護獣と並んで運命の神と会話している。

いったいなぜ…と思った時、運命の神が告げた。

「守護獣よ、理の塔を訪れる者の力を、試せ。
そなたを上回る力を持つ者しか、塔の中に足を踏み入れさせてはならぬ」

御意、とでも言いたげに、守護獣が頭をさげる。

「 “理の鍵人”よ」

運命の神が、ポックに向かってそんなふうに呼びかけた。

「そなたはもっとも大事な鍵だ。いつの日かここに、真実を求めて雪の神と人間の少女がやってくる。
その時に、そなたは鍵としての役割をまっとうせよ。
それまで何人たりともこの理の塔中枢に足を踏み入れさせてはならぬゆえ、そなたから記憶を奪おう。
そなたはすべてを忘れ、ただの神として天上界で生きるのだ。
そして来るべき日―そなたは神と人と共に、この場所にやってくる…」

「…はい」

「そして……そなたの命をもってして、最上階の扉は開かれるであろう」

「…はい」

ポックが頭を下げる。

そして運命の神の手により、ポックの真実の記憶が奪われる―――。